――丹下健三やル・コルビュジエといった世界的な建築家にも、実は黒歴史的な出来事や、イメージとは異なるスキャンダルがあったりする。あるいは、黒川紀章のように人柄や経歴を含めて有名な人の場合は、よくよく調べると、そのイメージが戦略により作られたものであることもあるという……。
■フランク・ ロイド・ライト
(1867~1959年/アメリカ出身)
主な作品/カウフマン邸(落水荘)、グッゲンハイム美術館、アリゾナ州立大学記念劇場(いずれもアメリカ)、自由学園明日館(東京)など。
■ル・コルビュジエ
(1887~1965年/スイス出身)
主な作品/ロンシャンの礼拝堂、パリ救世軍本部(いずれもフランス)、国際連合本部ビル(アメリカ)など。
■黒川紀章
(1934~2007年/東京都出身)
主な作品/ゴッホ美術館新館(オランダ)、国立新美術館、ソニータワー、青山ベルコモンズ(いずれも東京)など。
■丹下健三
(1913~2005年/大阪府出身)
主な作品/広島平和記念資料館(広島)、東京オリンピック国立屋内総合競技場、電通旧本社ビル、東京ドームホテル(いずれも東京)など。
近代の建築史において、破天荒な人生を送った世界的な建築家として真っ先に挙がるのはフランク・ロイド・ライト(1867~1959)だろう。ご存じの通り、近代建築の三大巨匠に数えられる人物で、日本でも1923年竣工の帝国ホテルが有名だ。建築ジャーナリストの磯達雄氏はライトについて次のように解説する。
F.L.ライトの作品「帝国ホテル ライト館」は、正面玄関部分のみが愛知県の明治村に移築されている。
「とにかくスキャンダラスな話が多い人物です。クライアントの奥さんを寝とったうえに、自分の奥さんとは別れようとしても別れられず、不倫状態でヨーロッパへ逃亡。アメリカの建築界からしばらく干されてしまったのは有名な話です」(磯氏)
このゴシップは当時、メディアでも大きく取り上げられ、アメリカに帰国後も彼はかつて住んでいた街には戻れない状態に。そこでライトは住居兼工房の「タリアセン」をウィスコンシン州に建設し、不倫逃亡したチェニー夫人と生活を始めるが、そこでさらなる悲劇が待っていた。なんと、彼が不在のときに、チェニー夫人と2人の連れ子、それに弟子たちの計7人が使用人に斧で惨殺されてしまったのだ。