――現在全国に数千人の芸人が存在するという“お笑い大国”ニッポンで、何を武器に戦うかは、各芸人の選択が試される。そしてここに1組、芸の原点に立ち返って、立ち返りすぎた男たちが……。
(写真/有高唯之)
隆盛するナショナリズム。世界遺産認定で見直される日本文化。和が注目される昨今、着物に身を包み、古来の芸能に興じる2人組がいる。彼ら、みなみのしまの活躍する舞台は、歌舞伎座でも能楽堂でもなく、よしもとの劇場。つまり生粋のお笑い芸人だ。ネタでは、ハイジとおぼしき少女が「クララのうつけもの!」と鼓舞するともうひとりが「立てぬ立てぬ!」と震え、「我のリリックいとおかし」とヒップホップ調にフロウしながら「MI・YA・BI!」と客を扇子で煽るなど、さまざまな事象を伝統芸能風に処理。まったく出自の見えない芸風だが、もともとはトリオを組む“コント師”だった。
南條「3年やっても全く芽が出ず、1人が株トレーダーになると脱退しまして……。それからコンビで漫才に取り組むんですけど、これも鳴かず飛ばずで」
三島「その時点で芸歴6年。焦りました。そこで一回お笑いの原点に立ち返ろうと歴史を紐解いたら、600年前、観阿弥世阿弥によって舞台芸が大成したと知りまして。ここから一回始めてみるかと」
南條「原点回帰しすぎました!」