――デビュー10周年を迎えた加藤ミリヤと、銀杏BOYZのメンバーとしても活動する峯田和伸が初共演で見せた〈愛〉の形。
(写真/cherry chill will)
ジョージ朝倉の原作マンガ『ピース オブ ケイク』(祥伝社)の実写版映画が9月5日から封切りとなる。ヒロイン役を多部未華子が演じ、恋人役は綾野剛。友人役には松坂桃李と木村文乃が配役ときたら、ありがちな純愛ラブロマンス……かと思いきや、主人公が劇中でに泥酔し、迫られた男性とは気の趣くままに情事に及ぶ――。そんなリアルな描写も含まれる、決して一筋縄ではいかない愛の形をテーマにした映画の主題歌を担当した、加藤ミリヤと峯田和伸による制作秘話をお届けしよう。
加藤ミリヤ 「監督を務めた田口トモロヲさんからご指名をいただいて、峯田さんと共演するのはどうか? とオファーされたことがきっかけでした。私はGOING STEADY時代から峯田さんのファンだったので、運命すら感じちゃいました」
峯田和伸 「ミリヤさんとはまったく接点がなかったんですけど、音楽以外の分野でも活躍していて、若い子たちへの影響力もハンパないじゃないですか。なので、もう、一緒に歌ったら絶対面白いと確信したわけですよ」
加藤ミリヤ 「私みたいな歌手、峯田さんは嫌いなんだろうなと思ってましたよ(笑)」
峯田和伸「そんなことないですよ。漠然とうまくいくって信じてましたから、僕。実際、一緒にレコーディングして、アイスコーヒーとミルクが溶け合うような色気、いやらしさが曲に出せたんじゃないかなって。でも、よくよく考えてみると、僕、ミリヤさんのこと、いまだになんにも知らないや」
加藤ミリヤ 「曲を作ることへのエネルギーを互いに放ち合いすぎちゃって……ほとんど普通の会話って、してませんね(笑)」
峯田和伸 「最近観た映画がウディ・アレンの『ブルージャスミン』って言ってたのは覚えてるけど……それくらいだな。でもね、それで十分なんですよ。情報は不必要で、互いの声を聞きつつ、曲として素晴らしい作品が出来上がれば、それ以上のぜいたくはありませんよ」
余計な情報は不要で、互いに惹かれ合うという感覚は、多部未華子と綾野剛が恋に落ちていく映画本編にも通じる。それぞれ映画に対してはどのような感想を持ったのだろうか。
峯田和伸 「僕は映画にも出演させてもらっているんですが、とにかく原作がすごく面白かったので、『ピース オブ ケイク』の世界観を生身の人間が演じたら、いったいどうなるんだろうと思いましたけど、原作とはまた違う良さが出せたのかな、と思っています」
加藤ミリヤ 「多部さんが居酒屋で酔っ払っているシーンがあって、『本当に酔っているのかな』と思って観ていたんですけど、実際に飲みながらの撮影だったようで、そういったありのままの姿が印象的に残る映画。ほかにも、多部さんが男風呂に殴り込むシーンとか、実際はできないけど、本当はやってやりたい! という女子の願望を叶えているシーンは、見ていて気持ちがよかったですね(笑)」
峯田和伸 「綾野くんと多部さんが仕事先から帰るシーンがあるんですけど、その後ろ姿が心に残ってるなあ。ささやかなんだけど、映画で久しぶりにああいう素朴で普遍的なシーンを観たなって」
加藤ミリヤ 「どんな状況でもフィットする面白さがある映画ですよね。『私は今、誰と一緒にいたいのかな』って思わせてくれる」
峯田和伸 「好きな人と一緒に観に行くと心が痛くなる部分もあると思うけど。ひとりで観に行っても楽しいと思うんで」
加藤ミリヤ 「映画の主題歌って、本編のおまけみたいな感じになることが多いんですけど、今回の主題歌に関しては“蚊帳の外”という感覚はまったくなくって、私も一緒に映画を作り上げられた一員として参加できたように感じています。ひとりでも多くの方に観ていただきたい映画ですね」
(文/編集部)
加藤ミリヤ(かとう・みりや)
1988年、愛知県生まれ。04年に「Never let go/夜空」でデビュー。BUDDHA BRANDやUAなどの名作をサンプリングした楽曲で注目を集める。音楽活動のほかにも、自身のアパレルブランド「KAWI JAMELE」のデザイナーとしても活躍。
峯田和伸(みねた・かずのぶ)
1977年、山形県生まれ。96年にGOING STEADYとして音楽活動をスタート。03年の解散後、銀杏BOYZを結成。ミュージシャンとして活躍しながら、俳優業も並行している。
「ピース オブ ケイク─愛を叫ぼう─feat.峯田和伸」
発売/ソニー 価格/1300円(税込) 9月2日発売
『ピース オブ ケイク』
男性に言い寄られたら簡単に付き合う梅宮志乃(多部未華子)が、引っ越し先で新しいバイト先の店長・菅原京志郎(綾野剛)に出会い、恋人がいると知りながらも京志郎に惹かれていく──。監督:田口トモロヲ 脚本:向井康介 配給:ショウゲート 公開:9月5日(土)公式サイト:http://pieceofcake-movie.jp