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サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.38

『海街diary』ファンタジーとしての鎌倉で、回りまわる“サイクル”の物語──是枝裕和の円熟

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×岡室美奈子[早稲田大学教授]

『吉祥天女』や『BANANA FISH』などの名作で知られる吉田秋生の連載中のマンガ『海街diary』が、是枝裕和の手によって実写化された。綾瀬はるか・長澤まさみ・夏帆・広瀬すずという豪華キャストが4人姉妹を演じた話題作は、いかなる仕上がりとなっていたのか──?

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左から、夏帆、綾瀬はるか、広瀬すず、長澤まさみ。風景を映す映像も、是枝監督映画らしいものだったといえるだろう。(公式HPより)

岡室 すごく良い映画でしたね。原作を大事にしながらも違ったテイストが織り込まれていて、それが違和感なく溶け込んでいるのが良かったし、映画を観て原作を再発見したところもある。以前に原作を読んだときは「サラサラしてきれいな話だな」と思っていたけれど、淡々とした日常がはらむ強い決意というのが今作を通して見えてきました。

宇野 原作と映画で一番違うのは、すずちゃん【1】(広瀬すず)の扱いですよね。マンガでは、特に後半になるほど彼女が主役になるけれど、映画では主人公というよりは、むしろ彼女に対しての周囲の登場人物の言動を通して、映画の世界観を表現する構造になっていた。

岡室 そうですね、これは幸【2】(綾瀬はるか)が母になっていく物語で、すずちゃんの話ではなくなっている。それと、原作より映画で強く感じたのが、これは「サイクルの物語」なんだな、ということです。原作に比べて四季が強調されているし、お葬式から始まってお葬式で終わるでしょう。大きな自然のサイクルの中で、人が生きて死んでいく──その流れの中で、何を受け継いで何を断ち切っていくのかを描いていた。原作にももちろんそういう部分はあるんだけど、すごく強調されているところでした。

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