――世界最大の宗教であるキリスト教は、どのような戦争観を持つのか。本文に登場いただいた宗教学者・石川明人氏が次の著書で迫る、キリスト教と戦争のタブーとは?
世界的大ベストセラーとも言える聖書。その中身も、タブーだらけ?
キリスト教といえば、一般に、暴力を否定し、戦争に反対しているというイメージがあるかもしれません。しかし私は、これを「嘘」とまでは言いませんが、一面的な見方であると考えています。キリスト教は愛と平和を説く一方で、一部の武力行使については“肯定”しているのです。
例えば、ローマ・カトリック教会の教理入門書などにも書かれている通り、キリスト教には、正当に権限が付与された者による暴力は、権利であるだけでなく、“義務”だとする考えがあります。いかなる暴力をも否定する「絶対平和主義」は、むしろ、悪の放置、悪への加担にもなりうるとして、批判されることもある。したがって、信者が軍人になることにも、なんら問題はありません。少なくとも、キリスト教の“主流派”は、決して純粋な「非暴力」でも「絶対平和主義」でもないのです。