――今年に入り、イスラム国の問題や、中国や北朝鮮との緊張関係、さらには連日報道される安全保障関連法案に関するニュースと、「戦争を放棄」したはずの日本にありながら、「戦い」を意識せざるを得ない空気が流れている。そんな今だからこそ、読んでおくべき本を紹介していこう。
戦争学の最前線を走るクレフェルトは、「戦争はスポーツの延長」だと、その闘志が駆り立てられる理由を解いている。戦場においては、自分の“強さ”を証明すべく戦う、という本能は否定できない。
戦後70周年の今年、安倍政権による安全保障関連法案の審議が過熱している。この議論を通して、「戦争」が身近に感じられるようになった昨今。特に集団的自衛権については、その解釈以前に、「戦争」につなげて嫌悪感を抱く人も多いのではないだろうか。
そもそも読者諸氏は、「戦争」についてどういうイメージを抱いているだろう? クラウゼヴィッツの『戦争論』【1】によって「戦争とは相手にわが意志を強要するために行う力の行使である」と定義され、人道主義や善意の感情を持ち込むべきではないとされた“侵略的”戦争だろうか? それとも、男たちが徴兵され、残された者たちが空襲から逃げ回る70年前の姿だろうか? いずれにせよ、二度の世界大戦を経て、国際人道法などが整備され、国連憲章で侵略的な戦争が禁じられるに至った現代では、そのどちらも現実的ではなくなった。
むしろ、9・11同時多発テロ以降のアメリカが打ち出した“自衛的”戦争、また、目的達成のためだけに行われる小規模な戦争こそ、今、世界的に展開されているその姿なのだ。
では、今読むべき戦争本とはどんなものなのか――? 実は、戦後、戦争や軍事をタブー視してきた日本においても、現代の「戦争論」についての研究が始まりつつある。そこで今回は、そんな戦争研究の今を読み解くための、本を紹介していこう。