進化の歩みを止めないIT業界。日々新しい情報が世間を賑わしてはいても、そのニュースの裏にある真の状況まで見通すのは、なかなか難しいものである――。業界を知り尽くしたジャーナリストの目から、最先端IT事情を深読み・裏読み!
シンプル極まりない構成とメッセージが提示された、ナウ・ディスのウェブサイト。
さまざまなニュースやウェブサイトの更新情報を、いちいちそのサイトを訪れずに見る方法として、かつてはRSSがあり、近年ではフェイスブックがそうした利用の場となっている。この流れはますます加速し、ウェブサイトの収益モデルを変えてゆく可能性すらありそうだ。
動画のスタートアップ企業ナウ・ディス(NowThis)が、自社のウェブサイトでのメディア展開を終わらせ、今後はソーシャルメディアのプラットフォーム上だけに動画を配信していく、と宣言して話題を呼んでいる。
同社のウェブサイトを見てみると、「ホームページ。この言葉はもはや古く聞こえる。今、ニュースは、あなたのいる場所にあるのだ」などと書かれ、その下にはフェイスブックやツイッター、タンブラー、YouTubeなど各種プラットフォームへのリンクが並んでいるだけだ。確かに動画はサイト上には掲載されていない。新興メディアのバズフィードも最近さかんに「ウェブのないメディア」というコンセプトを提案しており、ナウ・ディスはこれをいち早く実践したということなのだろう。
今メディアに求められているのは、読者のニーズに的確に対応したコンテンツをいち早く提供することだ。これを満たすためには、自社サイトへのリンクをクリックしてもらうという面倒な手間を読者に求めることではなく、読者がいつも滞在している場所に出かけていって、そのプラットフォームでコンテンツを丸ごと提供してしまうことが大切であり、それはマーケティング戦略としてきわめて正しい。