――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!
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芸能マスコミは「抜いた。抜かれた」でシノギを削っている。例えば、元旦に日刊スポーツがスクープした「綾瀬はるか・松坂桃李」の熱愛。ライバル紙は「抜かれた」と思いながらも、内情を探るのがマスコミ人の常。
「表向けは二人の事務所に事実確認をしますが、裏ではどういう経路でスクープしたかを探ります。また、二人の熱愛は本当かどうかを調べる。そこから後追いする価値があるかどうかを決めるわけです。今回の結論は『親しい友達の一人』ということで、今後の展開は調べるよりも出方待ち」(ライバル紙記者)
芸能情報の基本は芸能人が所属する芸能プロや関連先との日頃の付き合い方。芸能界からの情報を待つスポーツ紙と独自にネタを探す週刊誌では付き合い方の内容が必然的に違うが、芸能プロとマスコミの攻防戦がスクープに繋がる。元スポーツ紙デスクが語る。
「今は経費節減の折、スポーツ紙は芸能プロにご馳走になる傾向にある。昔は加えて金品など俗に言う"袖の下"があって、問題になったこともありましたが、今は完全に"ゴチ体質"。メシに酒に女。さらにゴルフなどになるが、これだって積み重ねれば大きい。いつの間にか記者は芸能プロの言いなりになってしまう。結果、芸能プロに都合のいい記事に終始してしまうケースもあるが、その中で親密度を上げ、信頼されればスクープももらえる。今回の綾瀬と松坂も、熱愛の確証が"お互いの家を行き来している"という関係者の話ですが、その関係者が信頼できるスジだから、自信ありと掲載に踏み切ったのだと思います」
芸能界側から見ればマスコミは両刃の剣。うまく利用すれば有利な記事ができるが、逆になれば、ばっさり切られることになる。
「マスコミと信頼関係を築くかですが、芸能界の動きもマスコミから密かに仕入れることも大事。"あの事務所はこんな動きをして○○を売り出している"といった情報から"俳優の○○が独立を画策している"といった話を仕入れる。やはり芸能界全体の動きは常に把握して、こちらも注意していないと、すぐに足を引っ張られる世界ですからね」(芸能プロ幹部)
対するマスコミ側も常に五分と五分の付き合いが大切になってくる。
かつて私は、「一方的にご馳走になってばかりいたら、いざという時にケンカできない。奢ったり奢られたり、常に五分の付き合いをしていることが肝心」と先輩記者から教わった。それでも、この業界は魑魅魍魎。一寸先は闇だ。
著者も苦い経験がある。業界の飲み会。ライバル紙の記者と同席になった際、「○○と○○が付き合っているようで、張り込んでいる雑誌があるよ」と話したところ、当事者のタレント事務所と懇意にしていた当記者は、即座に事務所に報告。張り込みを警戒するようになった。
業界内の話は流れが速い。一度、こんな実験をしたことがある。もっともらしいガセネタを日頃から「お喋り」で評判の記者に話した。案の定、その話は一週間もしないうちに著者のところにまで戻ってきた。しかも、「内緒の話だよ」と返ってきた話には尾ひれがつき、最初に著者が振った話とかなり違っていた。
先輩記者から「この世界に内緒の話はないよ」と聞いたことがあるが、「内緒」と言われて耳打ちする話ほど怪しいものはない。疑ってかかっても、その上手をいく人もいる。
現在、受刑者の身になった羽賀研二。タレントとして絶好調だった頃、連日梅宮アンナとの恋でマスコミに引っ張りだこだった羽賀。著者もよく飲みに連れていき接待しながら、情報を得ようとしていた。「本当に内緒の話。絶対に誰にも言わないで」とネタを提供してくれた。こちらは勝手に羽賀との信頼関係から得た情報だと思っていたら、なんと同じ話を他のマスコミの人にも「内緒」と教えていたのだった。今では笑い話だが、この業界の話は真に受けて信じてはいけないと思い知らされた。それは今も変わらないこと。
「平気でガセを流す輩はいくらでもいる。要は相手の話をどう聞いて、どう処理するかの能力が芸能界もマスコミも必要。その才能に長けた者は勝ち残れる」(芸能関係者)
今年の情報戦はどういった様相を見せるのだろうか?
ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母親が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。