法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。
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「公共事業費 半分以下に」
談合問題とは不可分な関係にある公共事業だが、14年度の公共事業関係費は、ピーク時(98年の約14兆90 00億円)の半分に満たない約6兆円にまで削減されている。その影響を受け、主に高度成長期に日本各地で整備され、耐用年数を超えつつある各種インフラのメンテナンスの問題が表面化。公共事業の見直しが叫ばれている。
東京・霞が関の合同庁舎に入る、公正取引委員会。内閣府の外局である。
2014年12月14日に実施された第47回衆議院議員総選挙は与党の圧勝に終わりました。その勝因について識者の多くは、安倍晋三内閣の外交政策などが支持されたからというより、アベノミクスなる経済政策による景気回復への国民の期待があったからでは、と分析しているようです。
アベノミクスの是非についてはおくとして、1990年代までの日本なら、景気・雇用対策といえば、とにもかくにも公共事業の実施が第一の政治的な選択肢でした。しかし、01年に小泉純一郎内閣が誕生し、構造改革の一環として公共事業の大幅な削減を推し進めて以降、日本の公共事業関係費は右肩下がり。その一方で、日本の高速道路上での事故としては過去最多の死者9名を出す惨事となった12年の笹子トンネル天井板落下事故に象徴されるように、日本は現在、50~70年代にかけて全国で一斉に整備された道路や橋、上下水道などの各種インフラの老朽化という大問題に直面しています。
そうした社会情勢を踏まえ、法社会学者として俎上に載せるべき犯罪を挙げるとすれば、やはり談合をおいてほかにありません。なぜなら、80~90年代と比べ、社会的注目を集める機会はめっきり減ったものの、談合という犯罪には、そもそも犯罪とはなんなのか、という根源的な問いに対するひとつの答えが隠されているからです。
便宜上、犯罪というものをふたつに大別すると、これまで本連載で取り上げてきた殺人や窃盗のような、およそどんな時代、どんな社会においても"悪"とみなされる、いわば"普遍的な犯罪"と、時代ごとに異なる社会正義ないし社会的公平性を担保するために"創造される犯罪"とがある。むろん、罪種ごとの線引きはそう単純ではなく、各犯罪の普遍性の度合いはグラデーションになっているというほうが実情に近いのですが、少なくとも、時代によっては犯罪とみなされない犯罪というものは確かに存在し、その代表格が談合であるということはいえるのです。今回は、談合を切り口として、改めて犯罪なるものについて理解を深めていきたいと思います。