――昨年のマンガ界におけるお騒がせニュースのひとつとして、『美味しんぼ』における福島原発事故をテーマにした「鼻血」騒動がある。すでに111巻まで巻を重ねた同作は、これまでにもさまざまな批判を受けてきた。とはいえ、日本のマンガ史に重たい足跡を残した重要作品であることも間違いない。料理・食マンガとしての『美味しんぼ』の功績と、他方積み重ねてきた悪評を、今あらためて振り返りたい。
(写真/永峰拓也)
1983年に連載を開始した『美味しんぼ』(小学館「ビッグコミックスピリッツ」掲載/原作・雁屋哲、画・花咲アキラ)。主人公の新聞記者・山岡士郎と父親で芸術家の海原雄山の対立を軸に、日本のみならず世界中の食材や料理を紹介するマンガとして、これまでに累計1億3000万部を売り上げている。
マンガ史における食マンガの金字塔としてそびえ立つ同作だが、同時に、誤った知識や偏見がかった意見をたびたび披露し、批判も受けてきた。そして昨年、「福島編」と題して連載されていたシリーズにおいて、東京電力福島第一原発事故後の当地に取材に入った山岡と雄山らが、帰京後に鼻血を出したのが放射線の影響によるものとする描写に、「風評被害を助長する」と非難が集中。「ビッグコミックスピリッツ」編集部は謝罪文を出し、次号で科学者や医師等の意見を集めた検証記事を掲載した。原作者の雁屋氏は14年12月、年明けの1月には福島原発事故に関する自身の主張をまとめた書籍を刊行すると発表している(1月5日現在、書籍情報はまだ公開されていない)。