――最新シングルが売り上げ50万枚超で、いよいよネクストブレイクアイドルとして注目が集まる乃木坂46。カップリングがアニメやCMのタイアップ曲になることも多く、それが乃木坂楽曲と知らずとも、耳にしたことがある人も多いはず。ここでは、そんな彼女たちの楽曲について、AKB48との戦略の違いをまじめに分析してみた。
アイドルソングが少ないためか、個性が際立つ激しいダンスよりも、全体のシンクロニシティを魅せるものが多い印象の乃木坂46の振り付け。これも、前項で述べた“私立女子高感”となっている気がするのは、担当編集だけだろうか。
世間的にはいわゆるAKB関連のグループとして認知され、また「AKB48の公式ライバル」と銘打たれている乃木坂46だが、看板となる楽曲についてはAKBがリリースするアイドルソングの潮流とは一風変わった特色を見せている。乃木坂とのかかわりが多いアイドル誌編集者の語る、次のような言葉にそれは端的に象徴される。
「AKBの楽曲は様式ができていますよね。AKBの曲って、基本的にファンがMIXを打てるように指示されているから、いってみればMIX仕様なんです。けれども、乃木坂は(デビューシングルの)『ぐるぐるカーテン』から、フレンチポップス風のサウンドを採用するなど、差別化を図っています。楽曲については、ソニーの意向が強く主張されているのではないでしょうか」
AKBグループのライブではMIXと呼ばれるファンのコールが馴染み深いものとなっていることもあり、楽曲が制作される時点でファンがMIXを打ちやすいようにあらかじめ対応した曲作りが行なわれることが多い。それに対して、乃木坂の楽曲は基本的にMIXを想定せず、AKB的な昨今のアイドルソングのスタンダードからは離れた、むしろ王道ポップスに近い趣を見せている。初期の「ぐるぐるカーテン」や「おいでシャンプー」などのシングルにフィル・スペクター調、あるいはフレンチポップ的な特徴が指摘されることが多かったように、当初から楽曲に関して乃木坂は独自の方針をとってきた。これは、「AKBと同じことをやっても成功しない」という秋元康や運営の方針、また乃木坂を手がけるSMEの伝統的な、音楽志向が大きく反映されたものだろう。逆に、アップテンポでAKB楽曲と親和性の高い昨年夏のシングル「ガールズルール」や今年7月リリースの「夏のFree&Easy」が発表された際には、「AKBっぽい曲」になっていることがファンの間で話題になったほど。秋元康によるAKB系でありながら、それほど曲のイメージはほかと一線が引かれている。