――東京の中には、日本人という同質の民族だけではなく、多くの外国人が生活をしている。コンビニなどでしか触れ合うことのない彼らの生活を観察すれば、我々が気付きもしない異質な場所が浮かび上がってくる。彼らの生活の礎となっている宗教施設を探訪し、東京のはざまに潜む異質な空間を浮かび上がらせてみた。
ほぼ無宗教に近い日本人からは想像もつかない、敬虔な暮らしをする人々がいるのだ。
現在、東京都民人口1329万人のうち、39・4万人が在日外国人として登録している(平成26年1月1日、東京都総務局統計部)。東京都に住んでいる人々のうち、実に、約30人に1人が在日外国人という状況であり、不法滞在などの未登録外国人も考慮すれば、その数はさらに増加していると考えられるだろう。特に、コンビニやファーストフード店で働く外国人労働者は、「キム」や「リー」などの北東アジア系だけでなく東南アジア系の名札を見かけることもしばしば。もはや彼らなしの店舗経営は考えられないほどに増加している。にもかかわらず、彼らの生活は日本人の目には見えにくい。そのためか、メディアを通して慣用句のように使われる「不良外国人」や「犯罪者グループ」といった悪いイメージが膨れ上がるばかりだ。
だが、そんな在日外国人を可視化しようとする動きが高まりつつある。2013年に『東京ヘテロトピア』という作品で、東京とアジア各国とのつながりをテーマとした演出家・高山明氏もそのひとりだ。
国内最大の国際演劇祭『フェスティバル/トーキョー』で初演された同作は、都内13カ所にあるアジアの関連施設をめぐるツアーパフォーマンス(観客が自らの足で施設を訪れるオリエンテーリングのような演劇作品の一種)。このプロジェクトは、上演終了後も継続されており、200カ所にまで規模を拡大させスマフホを使ってそこを探訪できるアプリを公開するための準備が行われている。
「近年、『日本』や『東京』が自己のアイデンティティを強化する動きがどんどんと強まっています。けれども、そんな急進的な動きからは距離を置き、在日アジア人の暮らしを可視化することによって、社会に対するカウンターを生み出したいと考え、ヘテロ(異質)な東京の場所を探しているんです」と、この作品にかける想いを語る高山氏。そこで、今回、「東京ヘテロトピア番外編」として、彼らの生活の礎となっている10カ所の宗教施設を取り上げて、高山氏と共に取材を実施(ボックスを参照)。特に、日本人からは若干縁遠い一方、外国人たちの生活とは密接にかかわる「宗教」に目を向けることで、我々日本人の眼差しから意識的/無意識的に排除されている隣人たちの生活領域に踏み入ってみよう。