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【premium限定連載】芸能評論家・二田一比古の芸能ゴシップ今昔物語

吉永小百合と高倉健——芸能トップ記者が見た国民的映画俳優の栄枯盛衰

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――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!

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『動乱』

先日、映画俳優の高倉健が急逝した。追悼記事では、国民的俳優と女優である高倉健と吉永小百合の競演や対談が多く放映された。

「どこの誰だか知らないけれど、誰もがみんな知っている」

 昭和の茶の間を独占したテレビ活劇『月光仮面』のテーマソングの一節である。かつて「叶姉妹」の出現時、巷でこう揶揄されていたことがある。今、若い人に吉永小百合について聞くと、似たような答えが返ってくる。

「女優さんでしょう。名前も顔もわかるけど、よく知らない。映画は一度も見たことがない」

 すでに69歳。吉永が女優として世の男性を虜にしていたのはすでに40年も前のこと。女優が“スター”と呼ばれ、スクリーン以外で見ることができなかった時代に、「世の中にこんなに美しい人がいるのか」と言われていたのが吉永だった。

 当時はタレントの生写真をブロマイドと呼び、その全盛時代。吉永のブロマイドは入荷したその日に完売していた。芸能界でもタモリや綾小路きみまろが「サユリスト」と知られるが、巷のサユリストはブロマイドを肌身離さず持っていた。飲み屋に行けば決まって小百合談義。

「絶対にオナラはしない」などと冗談のような話で熱くなっていたという。「オナラをしない」と言われるのだから、セックスなど絶対にタブー。これが「清純派」と名付けられた女優の宿命。役柄も常に清純派のイメージを損ねないものが義務付けられてきたという。

「70年代になると映画の世界にも大胆に肌を露出する人が出てきた。必然的に男性の目はそっちに動く。吉永さんが一番、苦しい時期だったと思います。打開策として高倉健さんと共演した『動乱』など相手役として出演して新境地を開拓し、さらに武芸路線と呼ばれる芸術色の強い映画に出るようになった。基本的には清純派の基本路線は崩すことなく、年齢を重ねても決して“老け役”はやらない。未だに映画女優と呼べるのは吉永さんしかいない」(元映画関係者)

 出演作品は120本以上に及ぶ。かつてはテレビドラマにも出演。歌手としても『NHK紅白歌合戦』に5回出場しているが、「本業は女優」としての姿勢は崩していない。

「ドラマ女優と違い、映画女優を貫き通すのは大変なことです。文字通りスターですから、手の届かない存在でないとならない。そのために最低限、守らなければならないのが私生活をベールに包んでわからないようにすること。最近の若手女優のなかにも吉永のように売ろうとする人もいますが、無理がある。例えば長澤まさみ。東宝のシンデレラガールは伝統的に“清純派”として売る。でも、今の子には私生活を自重させるのは難しい。逆に反発するように男遊びをしてしまい、常にマスコミにバレてしまう。長澤が若手女優として期待されていたのに伸び悩んでいるのは、清純派という看板と私生活に矛盾があり過ぎで、ファンが離れているためです。早く清純派を外してやることが、彼女にとって最良だと思います」(芸能関係者)

 私生活の露出はテレビ女優にとっては好都合。ドラマと私生活を被せてみせることができる。ようやく女優として復帰の目が出てきた沢尻エリカなどその典型である。必然的に吉永の女優としてのアキレス腱は、私生活の有効利用ができないこと。実際、若い人の間でも「どんな人がダンナさんなの。料理はできるのか」といった素朴な疑問も出るが、一切、公にしないことが良し悪しは別にして吉永の女優としての生き方。結果、あくまでも作品で勝負しなければならない。

「今もコンスタントに映画に出続けていますが、吉永さんの代表作となると未だに20代の頃の作品『キューポラのある街』とか『愛と死をみつめて』になってしまう。最近の吉永作品は客の入りは常にソコソコですが、大ヒットと呼ばれる作品がない。往年の吉永ファンは見ても、吉永をよく知らない若い人は行かない。未だに昭和の香りのする作品ですから、宣伝されても、予告編を観ても若い人は触手が動かない」(映画記者)

 それだけに「今回こそ代表作に」という吉永の意気込みが公開中の『ふしぎな岬の物語』からヒシヒシと伝わってくる。自ら初のプロデュース。早くから雑誌やテレビで宣伝活動を展開、そしてモントリオール映画祭でも二冠を獲得した。

 共演者も阿部寛、竹内結子と実力派で集客力が期待できる役者も起用している。話題性は十分だが、改めて若い人に聞いても、「あまり見たいと思わない」という冒頭のような回答が多い。どんなに宣伝活動しようと、映画の最終的な集客は「口コミ」以外にない。

 見た人が「面白いからぜひ見るといい」と年配者から若い人に伝えられれば、ヒットする可能性は高い。果たして、吉永作品の代表作になるのだろうか?

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母親が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。


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