――ここのところ、トヨタがヘンだ。ドラえもんや戦国武将をパロディにしたCMをはじめ、ニコニコ動画発の”弾いてみた”アーティストをCMに起用するなど、およそナショナルクライアントがこれまで手がけなかったような、衝撃のPR戦略を展開している。日本のトップメーカーがそこまでする、そのワケとは?
ピンククラウンに、トヨタウンCM、紗倉まなの連載コラム、そしてAKB48チーム8創設……やっぱりどう見てもどうかしてる最近のトヨタさん。
「私は15歳から20歳までの間、高専という工業系の学校に通っていました。 (中略)汗まみれで野暮ったい青春時代を過ごしている中で、興味をもったもの。それは『お化粧』でも『洋服』でも無く、『バイク』と『クルマ』でした」と、コラム上でクルマについて熱い想いを綴るのは、人気AV女優・紗倉まな。紗倉といえば人気AV女優であると同時に、深夜ドラマの女優業のほか、ウェブを中心に4本の連載を持つコラムニストでもある。それだけに、「紗倉まなのクルマと私のイイ関係」といったタイトルでコラムを書くこと自体は驚くべきことではない。だが、その掲載媒体が、あの天下のトヨタ自動車(以下、トヨタ)が運営する自動車好きのためのポータルサイト「GAZOO.com」だっただけに、広告業界では驚きの声が上がっていた。
「無論AV女優を差別するつもりはないですが、これまでファミリー層に向けた広告を展開してきた同社が、18禁のAV女優を起用したことに関しては、業界の常識を越えた企画だと思います。個人的には、応援したいですけどね」(広告代理店関係者)
トヨタといえば13年、売上高25兆6919億円、営業利益2兆2921億円(過去最高)を弾き出す世界一の自動車メーカー。2013年度のグループ世界販売台数(ダイハツ工業と日野自動車を含む)は1013万3000台(前年度比4・5%増)と初の1000万台に乗せている。年間3308億円超の広告宣伝費(12年度・連結)を使い、最上級ブランドである「レクサス」を筆頭にブランド価値の向上などを主眼とした広告宣伝活動を展開している。まさに日本の広告文化の一翼を担ってきたナショナルクライアントだ。
品質も高い評価を受け、米消費者情報誌「コンシューマー・リポート」が毎年発表している新車の品質調査では、トヨタ自動車の「トヨタ」ブランドと高級車ブランド「レクサス」が2年連続で1、2位を維持しているほどだ。
ただし、国内は少子高齢化によるクルマ離れの上に若者の小型車志向もあって、イマイチ。トヨタ単体だと年間新車販売台数は、前年比減の236万台(13年・日本自動車販売協会連合会)で伸び悩み気味だ。
09年6月より創業者豊田喜一郎の孫である豊田章男社長の新体制がスタートし、肥大化した経営の見直しと日本国内のクルマ離れの危機を前に、積極的な「カイゼン(トヨタ式業務改革のこと)」に乗り出している。
「13年、『国内販売』のほか、先進国事業の『第1トヨタ』、新興国の『第2トヨタ』などといった具合に組織を大幅に再編し、それぞれのトップ(副社長)に大きく権限を委譲したのです。また、広告・マーケティングに関しても、10年に大再編。グローバル市場でのマーケティング実践・支援機能を担当する『トヨタモーターセールス&マーケティング』の下に、日本国内市場を対象とした『トヨタマーケティングジャパン』を設立。これは本社の旧宣伝部を母体としたもので、広告代理店の電通、博報堂、デルフィス(トヨタの広告代理店)などとプロジェクトチーム的に広告・マーケティングが展開できるようにしたのです」(広告代理店関係者)