――ここまで、キッズアニメがアニメ業界で置かれている立ち位置や、そのビジネスモデルを見てきた。それでは作品自体の出来はいかほどのものなのか?ハイカルチャーからポップカルチャーまで幅広くウォッチする批評家・石岡良治が、『妖怪ウォッチ』&長く続く女児アニメの計5作を一気レビュー!
■妖怪が発生してきた歴史的過程とも相通じる
【1】『妖怪ウォッチ』
企画・シナリオ原案/日野晃博 監督/ウシロシンジ シリーズ構成/加藤陽一 制作/OLM 放映/テレビ東京
『レイトン教授』『イナズマイレブン』など多数のヒット作を生んできたゲームメーカー・レベルファイブが手がけるクロスメディア展開作品。さくらニュータウンに住む小学5年生・天野ケータと、執事妖怪ウィスパー、ネコの地縛霊妖怪・ジバニャンを中心に展開するギャグタッチの妖怪アニメ。ネットスラングや他作品のパロディネタが多く含まれ、大人でも笑える。
[レビュー]
日野アニメの持ち味である「広い間口からのぞくブラックな側面」が良い方向で最大限活かされた傑作。主人公のケータをはじめとした登場人物すべてにどこか性悪な部分が垣間見え、親の勧めなしに子ども自身が楽しめる要素が鍵。「たいていの事柄は妖怪のしわざ」という世界観に基づく創作妖怪の物語が、実際に妖怪が発生してきた歴史的過程と相通じることも重要。大ヒットを受けて伝統妖怪の現代的解釈も可能になり、原作ゲームもポケモンに迫る勢いをみせるが、その反面生じた、ジバニャンの過去が「いい話」と判明するなどのマイルド化は不可避か。
■優れたシステムで抜群の出来のはず、2期の停滞を挽回せよ!
【2】『アイカツ!』
原案/バンダイ 原作・制作/サンライズ 監督/木村隆一 シリーズ構成/加藤陽一 放映/テレビ東京系
「アイドル」と「ファッション」をテーマにした、バンダイの同名カードゲームが原案。主人公・星宮いちごに親友でドルヲタの霧矢あおい、最初からトップアイドルの神崎美月ら、名門アイドル養成校に通ってアイドルを目指す少女たちが登場し、それぞれに友情やライバル関係を育んでいく。12年10月より放映を開始し、3年目となるこの10月から第3部が始まった。
[レビュー]当初は粗削りながらも、カードダスとアイドルの融合など現代的要素を散りばめ、3Dモデルを改良していくことで10年代女児向けアニメの金字塔となった。だが2年目ではライバル校とのバトルが引き分け連発の一方で、強キャラ「美月」が何度もユニットを解消する展開になり、主人公たちの憧れの存在となるはずがダーティーな印象を生んでしまった。ほかの女児向けアニメにも研究され、停滞感は否めないが、3年目を迎えて主要キャラを一新。基本システムが優れているだけに、幸福感が持ち味の作風の立て直しに期待がかかる。今のところ滑り出しは順調。