――数多のアーティストの楽曲を手がけ、人気ドラマの劇中音楽まで幅広くこなす音楽プロデューサーが本領を発揮した、青春マンガへの敬意
(写真/オノツトム)
音楽誌『GROOVE』(リットーミュージック)にて連載されていたアマチュアからのデモテープ募集枠「Demo de GROOVE」というコーナー。およそ15年前、そのコーナーにて編集部一同が絶賛し、同誌付録のCDにまで楽曲が収録されたのが、本稿の主役であるKen Araiがアマチュア時代に結成したユニット、transluvの「Crazy Enough」という楽曲だった。インターネットがまだ主流ではなかったその時代において、「CDに収録されるということは、まるでメジャーデビューをしたような感覚だった」と振り返るKen Arai。
その収録をきっかけにtransluvは03年にデビューを飾り、以後彼はソロ活動も並行し、〈eighteen degrees.〉や〈a la i.〉名義でアーティストのプロデュース、自身名義の作品を世に送り出してきた。そんな彼が注目を集めたのは、12年に放送されたドラマ『鍵のかかった部屋』、そして昨年の『失恋ショコラティエ』(共にフジテレビ)のサントラを担当したこと。もちろん、劇中でもその楽曲は流れるわけで、ドラマの劇中音楽は得てしてシーンを盛り立てる一種のスパイスとして機能するものだが、ダンスミュージックを得意とする彼の手がけた楽曲は、ドラマのストーリー以上に視聴者の耳を刺激した。