――本で蘇る、僕たちの青春だったあのプロレスラー・格闘家回顧録。
『悪役道 ヒールたちのブルース』(エンターブレイン)
個人的に、プロレスのヒール=悪役といえばタイガー・ジェット・シンやアブドーラ・ザ・ブッチャー、蝶野正洋率いる狼軍団などが印象深いが、僕がもっとも恐怖し、その所業によって怒りに打ち震えたのは、ぶっちぎりで極悪同盟を率いたダンプ松本である。なにせレフェリーまでが極悪同盟のメンバーで、極悪がフォールした時にはすばやく、逆の時はスローになるあのカウントの仕方に本気で怒ったことを今でも覚えている。さすがにまだ子どもだったこともあり、卑怯な連中は許せないという気持ちが強かったらしい。ところが、彼女らの所業に怒っていたのは、純真なキッズだけではなく、大人も同様だったようだ。
僕がそのことを知ったのは、『悪役道』(エンターブレイン)に掲載されたダンプ松本のインタビューを読んでからだった。同書はほかにも、「ヒール」をテーマに、亀田興毅や長州力、安部譲二、真樹日佐夫といったいかにも悪そうな面子のインタビューが掲載されていて、実に読みごたえのある一冊だが、ダンプのインタビューを読むだけでも、この本に対価を払う価値が十分にあると思う。