――宝塚を愛する者たちにとって、「カリスマジェンヌを選べ」という質問はこれ以上ない難問だ。しかし今回、35年以上にわたり宝塚を取材してきた記者、薮下哲司氏がこの難問に答えてくれた。一般に“宝塚ブランド”を広めた功労者ともいえる、その10人とは?
男役編
■劇団の窮地を救った初代オスカル
榛名由梨(はるな ゆり)
1945年、兵庫県生まれ/入団:63年(49期)、退団:88年/愛称:ショーちゃん
元月組・花組トップスター。専科にも所属したカリスマ女優。「まだ集客に苦しんでいた頃の宝塚を救った演目『ベルサイユのばら』(74年)の初代オスカルを務めたのが、榛名さんでした。この作品の成功によって、宝塚の華やかな男役像は確立されていったんですよ。今の宝塚があるのは、彼女のおかげだと言っても、過言ではないのではないでしょうか」(薮下氏)
■日本のミュージカルを変えた女優
鳳 蘭(おおとり らん)
1946年、兵庫県生まれ/入団:64年(50期)、退団:79年/愛称:ツレちゃん
元星組トップスター。もとは中国籍だったため、愛称は本名の荘芝蘭(ツエン・ツーレイ)から(現在は日本国籍)。77年初演の『風と共に去りぬ』で初代レット・バトラー役を演じた。「鳳さんの舞台で人を惹きつける力は別格でした。また、退団後はミュージカル女優として活躍し、05年紫綬褒章を受章するなど、外に出てからも“宝塚”の力を世に知らしめる活躍をされた方です」(薮下氏)
■新しい風を吹き込んだレジェンド
大地真央(だいち まお)
1956年、兵庫県生まれ/入団:73年(59期)、退団:85年/愛称:真央、マミ
元月組トップスター。現役中、アイドルとして歌手デビューも果たしている。退団発表の際に、白いタキシードを着たのは大地が初めてだった(それまで緑の袴姿で行われていた)。「客席からどう見えているか、というのを非常にわかって演じている人でした。大地さんの活躍によって、男役のトップスターが芸能界に進出していく大きなきっかけにもなったと思います」(薮下氏)
■劇団員が崇拝する男役の“神様”
大浦みずき(おおうら みずき)
1956年、東京都生まれ/入団:74年(60期)、退団:91年/愛称:なつめ、ナーちゃん
元花組トップスター。「ダンスの花組」と呼ばれる時代を築いた。「初のNY公演でメインを飾ったのも彼女でした。早くに亡くなられたということもあり(享年53歳)、余計に劇団内で神格化されている存在でもあります。当時を知る劇団員のほとんどが彼女を崇拝し、その葬儀では、天海祐希さんをはじめ、歌劇団が呼んでも集まらないかもしれないほどの顔ぶれが一堂に会しました」(薮下氏)