――ジャニーズのアイドルたちがゴールデンタイムのバラエティで冠番組を持つ、そんな90年代の黄金期を経て、テレビの様相はすっかり様変わりしてしまった。打って変わってそういった時代に柔軟な対応をみせるEXILE陣営。ここでは各々のキャラクターを見つつ、両者が推し進めるテレビ戦略を追うことにしよう。
ジャニーズ特別取材班『本当は怖いジャニーズ・スキャンダル』(鹿砦社)
イメージを大切にするアイドルにとって、その個性やパーソナリティをどう発信していくかも重要な戦略のひとつ。ここではタレントの素が出やすい司会業やバラエティ、ゴシップなどの分野を通じてジャニーズ、EXILE両陣営が世間に与えるイメージなどについて考えてみたい。
まず、ジャニーズ事務所が近年すさまじい動きをみせているのが司会業への食い込みだ。多数の冠番組を抱える中居正広を筆頭に、NHK『あさイチ』で司会を務める井ノ原快彦、その裏番組として、3月からは国分太一司会の『いっぷく!』(TBS)もスタート。早朝の『ZIP!』(日本テレビ)では週2ペースで山口達也がパーソナリティを務めるなど、朝だけでも各局でジャニーズタレントの顔を目にすることができる。このように司会業への浸食が顕著になってきた背景には「SMAPなど40歳越えのアイドルが増え、ジャニーズが以前に比べてロングスパンなビジネスになったことがあります」と前出『ジャニ研!』の著者の1人である速水健朗氏は語る。
「本来、アイドルビジネスというのは2~3年の短いスパンで消費されていくものであり、今のように長く消費されるようになったのはジャニーズがきっかけなんです。『ファミリークラブ』という名が暗示する通り、まさにジャニーズの運営は『家族システム』。Jr.時代から目を付けて、10年20年かけて育て、デビューしてからもずっと見守っていくというスタイルですから、長くなるのは当然ですよね」
すべてのタレントが「ファミリー」であるからこそ、高齢化したからといって簡単に使い捨てることはできない。その中で新たな活動のフィールドとして見いだされた分野が司会業だった。年齢を重ね、アイドルとしては煮詰まってきたタレントたちでも人気に左右されることなく長く仕事をこなすことができるのだから、顔が売れている彼らにはうまみのある分野である。加えて新たに拓かれたのが嵐・櫻井翔が開拓した報道キャスターの道だ。『NEWS ZERO』(日テレ)への出演が決まった際には「アイドルに報道なんて」と非難する向きもあったものの、櫻井の勤勉な取り組みが認められ、NEWS小山慶一郎やKAT-TUN中丸雄一など後輩がキャスターとして後に続くなど確実に成功している。このように先輩が切り拓いてきた道を継承していくことができるのもジャニーズの特権だ。
「ジャニーズでは先輩をリスペクトする意識が高い。カウントダウンコンサートでも、先輩たちの曲を次々と披露していく流れがありますよね。仕事面でも誰が誰の系譜であるというのを受け継いでいくところがあって、歌や演技、司会、今なら櫻井くんのようにキャスターを目指したりとか、そういうファミリーの強さみたいなものは今後も引き継がれていくでしょう」(同)
事実、そうした流れの中で事務所側も、キャスターを務めていくための武器となる“学歴”を積極的にアピールしている節が見受けられる。Sexy Zoneの中島健人は明治学院大学、菊池風磨も慶應義塾大学に通う現役大学生。4月にデビュー予定のジャニーズWEST・中間淳太も関西学院大学卒のエリートだ。Jr.内でも、進学の可能性が高い知性派が積極的にプッシュされる傾向にあり、「歌って踊ってかっこ良ければおバカでもいい」というアイドル像はいまや過去のものとなりつつある。しかし、そうした“ジャニーズ優等生化”の流れの中に、EXILE陣営の付け入る隙が生じてしまったのだと速水氏は分析する。