千葉善紀(ちば・よしのり)
1965年、長野県生まれ。ギャガ・コミュニケーションズ、メディア・スーツを経て日活のプロデューサーに。プロデュース作に三池崇史監督の『ヤッターマン』(03年)、園子温監督の『冷たい熱帯魚』(10年)『恋の罪』(11年)ほか多数。『TOKYO TRIBE』が公開待機中。
(絵/小笠原 徹)
園子温監督のヒット作『冷たい熱帯魚』は実在の連続殺人事件をモデルにしたものゆえ、本来は国内で映画として成立させるのが難しい企画でした。そこで「スシタイフーン」という海外輸出向けのレーベルを社内で立ち上げて、その中の1本ということにして企画を通したんです。もちろん、日本のジャンルムービーは海外で売れるという読みがあってのことです。というのも井口昇監督の『片腕マシンガール』(08年)を北米のビデオメーカーから発注を受けて製作したところ、北米だけでDVDが10万枚以上セールした大ヒット作になったんです。
日本の映画マーケットは伸び悩んで閉塞的な状況。海外に進出しようにも、ハリウッド大作には敵わない。それで「スシタイフーン」はバイオレンスやアクションなどに特化したレーベルとして僕が個人的に始めました。予算は1作品につき5000万円で、若手監督たちにやりたい放題で撮らせたんです。西村喜廣監督の『ヘルドライバー』(11年)は7万枚出荷するなどそれなりの数字が残せたんですが、北米のDVDマーケットの縮小化が進んでいたため、もうひとつ勢いに乗り切れなかった。北米に乗り込むのに、さすがに僕ひとりの力では難しかった(苦笑)。
そこで、アジアの新興国で勢いのあるクリエイターたちと組んで、「スシタイフーン」の進化形をやろうと考えたわけです。インドネシアのアクション映画『ザ・レイド』(12年)は予告編がカンヌ映画祭で披露されただけで世界各国に配給権が売れたと耳にした頃に偶然、同作のギャレス・エヴァンス監督がプロデュースするバイオレンスものの脚本が僕のところに持ち込まれた。それが日本とインドネシアの初合作映画となった現在国内公開中の『KILLERS/キラーズ』(主演:北村一輝/「【北村一輝】ターゲットは世界……映倫・規制を打ち破るアジアの表現者に学べ!」にインタビュー&作品詳細掲載)です。
日本の映画作りは制約が多すぎる。製作委員会方式はその最たるものでしょう。その点、『キラーズ』のモー・ブラザーズ監督は、三池崇史監督をはじめとする日本のホラー映画が大好きで、最初から世界をターゲットにとんでもない作品を撮り上げてしまった。おかげで、日本だけでなくインドネシアでもR18指定をくらいました(笑)。1月にサンダンス映画祭でプレミア上映され、あっという間に北米を含む主要国にセールスが決定しました。