増税に怯える、新聞各社の悲しき叫び
4月からの消費税増税に怯えているのは、何も一般企業だけではない。増税決定前は、「財政健全化のために増税もやむなし!」と社説などで血気盛んだった大手新聞各社も、実はこの増税に戦々恐々としているのだという。そのため、新聞業界に軽減税率の恩恵をもたらそうと、各所で必死にアピールしているというのだが……。
『ナベツネだもの』(情報センター出版局)
「この調査結果が現実のものになれば、間違いなく潰れる新聞社が出てくる」
2013年末、広告代理店最大手の電通が取引先にのみ配った“極秘レポート”が、全国紙各社の幹部たちに衝撃を与えた。そのレポートとは、14年4月に消費税が8%に引き上げられた後の消費動向について調査したもの。特に幹部たちの目を引いたのが、「消費税引き上げ後、即売のスポーツ紙が値上げされれば、その購読をやめる」との回答が大半を占めたことだという。即売とは駅売店やコンビニなどでの販売形態を指すが、スポーツ紙の駅売り依存度は全体の4割程度ともいわれる重要販路。傘下にスポーツ紙を抱えるある全国紙幹部は、「実際にここまでシビアな影響が出るかどうかは未知数だが、それでも値上げすれば多くの読者を失うことは覚悟しなければ」と苦渋の表情を見せたという。
そもそもスポーツ紙の経営状態は、この10年ほどで崖を転げ落ちるように悪化の一途をたどっている。全国の新聞社などが加盟する日本新聞協会がまとめた調査によると、スポーツ紙全体の発行部数は、00年に約630万部だったのが13年には約387万部と4割近くも落ち込んだ。この背景としては、若者を中心にインターネットを通じてスポーツや芸能情報を手に入れることが多くなっていることのほか、スポーツ紙の主要コンテンツである競馬などギャンブル人気の凋落もあるのではないかとみられている。
『消費税増税』
2012年8月、野田内閣にて消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が成立。13年10月に、安倍内閣にて消費税率を5%から8%に引き上げることが閣議決定された。
「かつての新聞社にとってスポーツ紙は、黙っていても売れるドル箱でしたが、今では野球やサッカー取材で国内外への出張が多く膨大な経費がかかる割には利益が少ない“金食い虫”になりつつある。消費税の増税後、スポーツ紙の経営は危険水域にまで落ち込む可能性もありますね」(前出の全国紙幹部)
スポーツ紙が消費税増税後に値上げに踏み切るかは現時点で不透明だが、日刊スポーツ、スポーツニッポン、サンケイスポーツの1部売り定価(東京都内)は現在130円で横並び。記事内容と違って経営に関しては“談合”が大好きな日本の新聞社ゆえ、価格据え置きにしろ値上げにしろ、各社で足並みを揃えるとみられている。