――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!
『生きざま 私と相撲、激闘四十年のすべて』(ポプラ社)
大沢樹生と喜多嶋舞の間で勃発した息子のDNA鑑定騒動がきっかけになったのか――。若貴兄弟の母親、藤田紀子が突如、ゲスト出演した番組で、「兄弟は2人とも100%夫婦の間でできた子どもです。公のところで鑑定しようじゃないかしらと思うくらい」と語った。
「"寝た子を起こす"という言葉があるが、まさか当人から起こすとは……」と語るのは、相撲関係者。
「相撲界では昔から、若貴兄弟の父親は違うという説が通っていました。でも、確信があるわけではなく、誰かが本人に問い正すこともなかった。今やそんな話はみんなすっかり忘れていたのに、紀子さん自身から騒動を思い出させる意図がわかりませんね」
著者も古くから、この話は聞いていた。酒席を重ねた親しい関取も、「父親は違うのでしょう」とさりげなく話をしていたものだが、あくまでも噂の域を出ることはなく、「都市伝説」のように言われていた。
芸能界には実におもしろい都市伝説なるものがある。いくつか例を挙げてみよう。
「アイドル歌手が空港で検査場にひっかかり、トランクを開けたら電動コケシが出てきた」
「膣痙攣を起こし、病院に運ばれた女優」
「ベテラン女性演歌歌手はすでに子供を産んでいる」
当然のように下ネタが多いが、中にはまともなものもある。
「福山雅治は北陸の高級マンションを購入し、そこに恋人を住まわせている」
これには実際に、北陸地方まで福山の恋人を探しに行った記者もいたそうだ。
都市伝説といえば、社会問題にまで発展したのは「口裂け女」だろう。マスクをかけた謎の美女が突如現れ、「私、きれい?」と見知らぬ人の前でマスクを取ると、大きく口が裂けた女だったという話だ。嘘か真か全国各地で「私も見た」という者が続出。マスコミも取材に駆けつけたこともあったが、いまだに実態はわからないまま沈静化していった。
ときには週刊誌側が仕掛けることもあった。筆者も東北の田舎にある銅像が動くという話を取材に駆り出された。一日中銅像を見ていてもまったく動かない。デスクに連絡すると、「人が集まったとき、オマエが『動いた』と叫べ。そうすると群衆の心理で、『そう言われると動いたような気がする』と話が広がり、記事にすることができる」という指示だった。
今で言うところのヤラセではあるが、罪のない記事としてまかり通っていた。昔、女性誌の定番として心霊現象記事があったが、多分にヤラセに近いものも少なくなかっただろう。
話はそれたが、都市伝説とはどれも確かな根拠のあるものはなく、噂に尾ひれがついたものばかり。記事にする価値もないものが多いが、若貴の話は一時的に公になっていた。きっかけはある野球評論家が講演会で語った話からだった。
「野球の話の合間に聴衆を盛り上げようとしたのか、若貴の話をした。その話を一部の週刊誌が取り上げたことで、話が広まった。しかし、根も葉もない噂話として以後、マスコミが取り上げることもなく、せいぜい居酒屋のヨタ話に過ぎなかった。ちなみに、評論家の方も花田家に詫びを入れたという話でした」(スポーツ紙記者)
それでも、若貴の話には妙に説得力があった。兄の花田虎上(旧名・勝)の父親は叔父に当たる花田勝治という説だが、顔も似ているし、なによりも"勝"という名は父親の一字を取ったものだという話。弟の貴乃花親方の父親は初代の貴乃花親方だが、これも「父親は輪島」という話にまで飛び火していた。
これらの話を実証するように、仲の良かった兄弟はやがて仲違いし、今では断絶。母親の紀子さんも兄とは交流するものの、弟とはいまだに親子断絶状態が続くことが、異父兄弟説を裏づける根拠になっている。突如、ぶり返した若貴騒動。着地点はどうなるのか、テレビ関係者はこう話す。
「紀子さんは基本的に出たがり。とはいえ、唐突にテレビから声はかからない。やはり相撲界の話の時は適任者ですが、それ以外ではおもしろみに欠ける。今回も自ら若貴のネタを提供することで出演がかなったのでしょう。自ら撒いたネタですから、今後も若貴の話をすることを条件にお呼びがかかるでしょう。特にタブーの緩い関西ローカルの番組なら、お兄ちゃんと一緒の出演もあり得る。当然否定はするでしょうが、知らない人にとっては若貴の異父騒動だけでも関心はあるはずです。本当にDNA鑑定して結果を公表したらおもしろいでしょうが、本気で鑑定するとは思えません。一時的な話題作りで終わりだと思います」
まったく人騒がせな母親である。