伝統宗教では、信者が減少し、一方でカルト宗教に対する警戒心は根強い昨今。果たして、人々が求める宗教と、日本の宗教が抱える問題点とは――?
オウム真理教事件の影響から一時は新宗教に対する警戒心が高まっていたが、ここにきて再び「宗教」がブームとなっている。『出版年鑑』(出版ニュース社)によると、神道、仏教、キリスト教など各ジャンルを合算した宗教関連書籍の出版点数は、09年の1170点から12年は 1318点と、右肩上がりだ。
スピリチュアルブームからもわかる通り、超越的なものに対していやしや救いを求める傾向は、オウム事件以降にも強く見られた。そして、多くの死者を出した東日本大震災や、社会の高齢化によって人々は「死」をより身近に感じ、心の拠り所を宗教的なものに求める傾向が広がっているようだ。
では、果たして伝統宗教や新宗教がそういった需要にこたえられているのか? 北海道大学大学院文学研究科教授の櫻井義秀氏は、「震災以後は被災地に入り死者を供養したり、心のケアや支援物資、復興活動などでサポートしたりと、宗教の役割は拡大しました。しかし、人々に死生観を説くなど、より生活に密着した存在になれているかどうかは疑問。例えば仏教も檀家制度など既存の枠組みから踏み出すことができず、一般市民にとっては決して身近だとはいえない」と分析する。新宗教も強引な信者獲得や巨大化した組織の維持に拘泥するあまりに、いまだ「危険な存在」と忌避される。