――女性向けマンガの一ジャンルとして勢力を占めるボーイズラブ。男性でも読める爽やかな作品が高評価を受けている一方で、ガチのBL好きの間では相変わらずエロにも抜かりない作品が支持されている。そしてその世界では、エロ描写が深化しすぎてすごいことになっているのだ。なかなか語られない、ディープなBLの世界を探訪してみよう。
本屋でも陰のコーナーから堂々とフェアが展開されるスペースに!
ヤマシタトモコの『BUTTER!!!』【1】や、中村明日美子の『呼出し一(はじめ)』【2】など、人気BL作家の青年誌への進出も進み、ここ数年でかなり市民権を獲得した感があるボーイズラブ(以下、BL)。彼女たちの作品は絵柄がスタイリッシュで、比較的読む者を限定しない。そうした作家たちの活躍によって最近では、単純にストーリーが面白い、絵がオシャレなどを理由にBLを読む……というノンケ男性もいるようだが、BLの世界はシャレオツ作品だけでは語れない! もっともっと奥深いのだ。
まるで少女マンガの延長のようなオシャレ系BLの登場で、ガッツリとエロを描いてきた古き良き(?)BL作品は影を潜めているように感じるが、エロ重視のアンソロジーなどを積極的に出している版元の作品を見てみると、そのジャンルはかなりマニアック&ハードなものに進化している印象が。たとえばリブレ出版のアンソロジーシリーズ「b-BOY キチク」では「おもらし特集」【3】なんてスゴいタイトルのものがあるなど、エロ重視のBL作品はもはや、淫情ほとばしるようなとんでもない域に達しているのである。また書店でBLマンガの帯やキャッチコピーを眺めてみると、「ココロが勃起するから、カラダが絶頂なんだ!!」、「挿しつ、挿されつ、男の愛!」など、もはやカオスともいえるような文句が並んでいる。
オシャレBLの台頭でエロ重視の作品は弱体化してしまったのかと思いきや、むしろさらにパワーアップしている……? そこで、女性の究極のエロと萌えを掘り下げたディープなBL作品の現状を探るべく、ぶっ飛んだ作品を多数生み出しているBLマンガの編集部に行ってみた。(「リブレ出版『b-BOY』編集部『素股』もついに解禁、リニューアルを重ねるごとによりニッチでマニアックに」、「海王社『GUSH』編集部 SM、体毛、下着フェチ げに貪欲すぎる女子たちの“私だけの萌え”探求」を参照。
(文/遠藤麻衣)
【1】『BUTTER!!!』
ヤマシタトモコ/講談社(13年)/600円
BL出身作家にして「このマンガがすごい!」11年版ではオンナ編の1・2位を独占した注目作家の青年誌連載作。社交ダンス部の高校生たちの群像劇。
【2】『呼出し一(はじめ)』
中村明日美子/講談社(10年)/590円
『Jの総て』で腐女子の心を鷲掴みにした作家による、相撲の「呼出し」に挑戦する青年を主人公にしたラブコメ。作者体調不良につき、休載中。
【3】『b-BOY キチク おもらし特集』
リブレ出版(12年)/990円
表紙を二度見する、衝撃の「おもらし」特集。ただし、いわゆる成人コミック的なスカトロとはかなり違う。ヤマシタトモコ氏もノリノリで執筆している。