――ピーマンの肉詰めに白和えといったなんの変哲もない料理のレシピを脱力的にラップする、DJみそしるとMCごはん。メジャー・デビュー直前の彼女に話を訊いた。
(写真/磯部昭子 A/M)
友達のお悩み相談会が開かれたときのこと、彼氏への不満を打ち明けた子に、「ラップにして伝えなよ。言いにくいことはラップで!」とアドバイスした女子がいた。なるほど、伝えにくいことをラップで表に出すというのは、ヒップホップの真髄を突いているだろうし、今やラップは身近な表現手段として、女性にも定着したのかもしれない。
料理のレシピを伝えたくて、ラップを始めた。DJみそしるとMCごはん。2人組のようだが、1人の女性によるプロジェクトだ。名前からして、湯気が立っているみたいにおいしそうである。
女子栄養大学に在学中の卒業研究の中で、レシピを広く伝える新しいメディアを探して、彼女はヒップホップを発見した。
「鼻歌を口ずさむみたいに、料理ができたらいいなと思ったんです。料理本は簡潔にまとまっているけれど、本とにらめっこしながらつくるのは、ページを汚しちゃったり、読みまちがえて順番を飛ばしちゃったり、ちょっと不便。テレビの料理番組は、なかなかレシピを覚えづらいけど、トークのかけ合いが気持ちいいですよね。女子アナウンサーが玉ねぎをみじん切りにするけどヘタッピだったり、見ていて微笑ましくなります。そういう楽しさと一緒に、もっと自然にレシピが自分の中に入ってくる方法はないかなって思ったんですね。ヒップホップはメッセージ性が強いし、韻が踏まれているから、言葉と一緒に覚えやすいんです」