新聞記者が見た霞が関“狂想曲”
アベノミクスの大騒ぎもひと段落し、政治ネタはみずほ銀行の暴力団融資問題で持ちきりとなった。官邸の政治家たちや霞が関の官僚たちがその対応に追われるなか、そのドタバタぶりを間近で眺めた新聞記者たちには、いろいろと言いたいこともあるようで……。
【座談会参加者】
A…全国紙経済部デスク
B…全国紙経済部若手記者
C…経済史中堅記者<
D…全国紙経済部中堅記者
『国民が知らない霞が関の不都合な真実 全省庁暴露読本』(双葉社)
A アベノミクスで景気のいい話ばかりの日本経済だけど、みずほ銀行が提携先の信販会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)を通じて暴力団員らに融資していた問題は、久々に出た不祥事だったな。
B 2008年の齋藤宏・元みずほコーポレート銀行頭取の“路チュー事件”とか、東日本大震災直後のATMトラブルとか、問題を起こすメガバンクはみずほばかり(笑)。
C でも、みずほ問題では全国紙の反応が鈍かったですね。この問題は、9月27日に金融庁がみずほに業務改善命令を出したことによって発覚しますが、翌28日付朝刊では、朝日、読売は1面で報じたものの、日経、毎日、産経は経済面や社会面で地味に報じるだけでした。
D まあ、メディア側のスクープではないために扱いが悪くなったという面は大いにありますね。金融庁の動きも、かなりマイルドだったし。
A 10月1日の安倍首相による消費税増税の表明を控え、金融業界の不祥事を官邸や財務省サイドが嫌った、みずほの佐藤康博頭取が政府の産業競争力会議の民間議員を務めるなど安倍首相とも近いので遠慮した、などの噂も耳にしました。でも金融庁が本当に恐れたのは、今回の問題の深刻化で、みずほが再びバラバラになることだと思いますよ。
B どういうことっすか?
D 02年に誕生したみずほに、富士、第一勧業、日本興業の旧行意識が根強く残っていて派閥争いをしているのは有名な話で、金融庁もずっとそれを問題視していた。金融庁のそうした意向をくんだ佐藤頭取は、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行を合併させるなど、強いリーダーシップでみずほの一体化を進めてきた立役者。ただ、改革はまだ途上にあり、ここで佐藤頭取が辞任すれば、みずほが再びバラバラになってしまうのは目に見えている。金融庁はそういう事態を恐れて、“大甘といわれてもおかしくない検査・処分”【1】をみずほに対して行ったというわけだ。