"カストリ雑誌"などと揶揄されながらも魑魅魍魎が跋扈する芸能界において、一服の清涼剤として機能するオヤジ系実話誌の数々。普段は表立って語られないこれら愛すべき実話誌(一般週刊誌含む)の下世話なゴシップを、芸能評論家・三杉 武がランキング形式で解説する、実話誌時評――。
1位 独占スクープ 能年玲奈 注目次作は暴走族ヤンキー(「アサヒ芸能」)
2位 「ジャニーズ」クビ! 元「KAT-TUN」田中聖直撃インタビュー(「フライデー」)
3位 能年玲奈 映画次回作は伝説の暴走族マンガ『ホットロード』に決定!(「週刊文春」)
4位 明石家さんまが週イチ密会する38歳下有名SEXY女優(「フライデー」)
5位 堺雅人、菅野美穂 新ドラマ放送前にSEX儀式(「週刊実話」)
『「リーガルハイ」公式BOOK 古美門研介 没頭記』(角川マガジンズ)
ジャニーズの人気アイドル・KAT-TUNの田中聖の解雇や矢口真里の休養宣言など大きなニュースが飛び込んできた先週に比べれば、若干平穏ムードだった今週の芸能界。
そんな中、こっそり(?)とスクープを抜いたのが「アサヒ芸能」である。
NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』でヒロインの天野アキを演じ、一躍時の人となった女優の能年玲奈。『あまちゃん』後の次回作については数多くのマスコミ媒体が関心を示していたが、いち早く次回作となる主演映画『ホットロード』の情報をキャッチしたのが同誌だ。
80年代に少女コミックスで連載され、当時の女子中高生から圧倒的な支持を集めた人気漫画を原作にした同映画で能年は、暴走族のリーダーに憧れて愛を育む金髪の不良少女を演じるとか。
ほぼ同内容の記事がスクープには定評のあるイケイケ路線の「週刊文春」にも報じられて、同誌の早刷りを見た映画会社の松竹が慌てて朝刊スポーツ紙に情報を解禁したという話だが、実際は「文春」よりも1日発売日の早い「アサ芸」の見事なスクープ。
奇しくも先週の当コラムで「『アサ芸』と言うと世間的には飛ばしのイメージが強いが、業界内では『記者がかなりしっかりと取材している』と評されており…」と書いたばかりだが、わずか1週間後にその言葉が実証されて、個人的にもうれしい限りだ。特に、昨今の芸能プロダクションのなかでもことのほか情報統制には力を入れている能年の所属事務所を相手どって朝刊スポーツ紙を抜いたという点も、大いに評価したい。
「能年玲奈 映画次回作は伝説の暴走族マンガ『ホットロード』に決定!」については、通常ならばさすがは「文春」としたいところだが、今回は惜しくも「アサ芸」の後塵を配したために3位とした。
振り返って、2位は渦中の人物KAT-TUN・田中聖の直撃取材に成功した「フライデー」の「『ジャニーズ』クビ! 元『KAT-TUN』田中聖直撃インタビュー」。
最近は出版不況のあおりを受けて各誌とも取材経費の削減を強いられている。そうしたなか、"初めに写真ありき"の写真週刊誌は張り込みなどの費用対効果の面でも、かなり厳しい状況に追い込まれているわけだが、一般読者のニーズに合わせて「今もっとも旬な人物をアツいうちに直撃する」という当たり前のようで、かなりハードルの高い伝統芸をキッチリと果たしてくれているのが今回の記事だ。
4位の大御所芸人の明石家さんまと人気AV女優の紗倉まなとの焼肉&カラオケ&高級中華料理店デートをキャッチした「明石家さんまが週イチ密会する38歳下有名SEXY女優」とともに、まさしく芸能マスコミの王道ともいうべき内容。
今後も同誌には、まとめサイトをはじめとする"無断引用"に負けず、写真週刊誌の矜持を見せてほしい。
5位については大いに迷ったが「週刊実話」の「堺雅人、菅野美穂 新ドラマ放送前にSEX儀式」をピックアップ。
内容に関しては推して知るべしだが、いまだにSEXに"儀式"というフレーズを付けるあたりに、「実話」ならではの時代に媚びない伝統芸の強みを感じる。歴女しかり、『あまちゃん』ブームしかり、最近は懐古的ムーブが世間的な関心を集めているが、そういう意味では「実話」がブームになる日も近い!?
三杉 武(みすぎ・たけし)
大学を卒業後に全国紙で記者を経てフリーに転身。記者時代に培った独自のネットワークを活かして、芸能評論家として活動。週刊誌やスポーツ紙で独自の視点からコメンテーターを務めるほか、スクープ記事も手掛けている。アイドルやアニメ、TRPG、プロレスなどのサブカルチャーにも造詣が深い。
2012年には『AKB48総選挙2012公式ガイドブック』にて、10論客として第4回AKB48選抜総選挙の予想および解説を担当。翌2013年にも『AKB48総選挙2013公式ガイドブック』にて、8論客として、第5回AKB48選抜総選挙の予想および解説を務める。