――精神科に対する理解が深まる一方で、その中には、効能の薄い薬を高額で処方している医師などもいるようだ。では、実際にどんな薬が金儲けに使われているのか? 医師に処方された薬を飲んでいれば間違いないという思い込みを覆す薬ビジネスとは──?
内海氏が経営するTokyo DD Clinicでは、減断薬治療を実施する。
普段、我々が当たり前のように服用している薬。心身の不調を治すために信頼を置いている人も少なくないが、「金儲けの種にされている」との声が上がっているのをご存じだろうか? NPO法人・薬害研究センターを運営しているTokyo DD Clinicの院長・内海聡医師は、自著『精神科は今日も、やりたい放題』(三五館)などで、精神科では患者への“薬漬け医療”が横行し、向精神薬の禁断症状によって病状が悪化してしまう場合があることを指摘している。こうした医療業界の暗部に切り込んだ書籍出版の影響もあり、彼のセカンドオピニオン(患者が自分の病状について、ほかの医師にも意見を聞くこと)を求めに来る患者も少なくない。
だが、実際はどうなのだろうか。関係者の証言を元に、真偽を追っていこう。
「製薬会社と精神医療が儲かるように、両者が診断基準を設定してきた」「薬が先に開発されて、その薬を売るために都合のいい精神疾患が作り出されている」──。前掲の著書『精神科は今日も、やりたい放題』では、こんな衝撃の現状が告発されている。著者の内海氏は語る。
「バルビツール、ベンゾジアゼピンなどの向精神薬は、タバコや覚せい剤と同様に依存性があることで知られています。実際、私がセカンドオピニオン活動を行う中で、患者の病状が悪化した原因を調べてみると、ほとんどが向精神薬に対する依存と禁断症状によるものでした。薬をやめると禁断症状が出てしまうから、また飲むという繰り返しに陥っている患者が多いんです」
こうした状況の原因を内海氏は「製薬会社や医学会が、自民党や公明党などに政治献金を送り、ロビー活動を行い、効果が思わしくない薬でも積極的に認可がおりるようにしたり、医者や家族の承認があれば本人の意志にかかわらず入院させることができるなど、都合の良い法律が作られ続けています。現状の精神医療では、社会から逸脱した“はみ出しもの”を、強力な薬によって沈静化することを目的にしており、根本的な問題を取り除く治療はしません。それが故に私は、“患者を薬漬けにして儲けているだけ”と主張しているのです」と説明する。
また、内海氏は患者の家族にも責任の一端があると指摘している。
「精神科に来る半分くらいの患者は、薬を飲むことをためらうのにもかかわらず、家族が薬を飲ませることを望むケースが多い。家庭の厄介者を薬でコントロールしたいと願うんですね。家族が精神医学の虜になっているんです。ちなみに、患者の家族で構成される『家族会』にも、製薬会社から献金が渡っています。薬を飲ませたい家族、売りたい製薬会社とのズブズブな関係がうかがえます」
こうした結果、「精神保健福祉法の改正により、患者を強制的に保護入院させられるのが1親等から3親等に拡大されました。すでに、親族の要請により突然、身に覚えのない病状で入院させられ、手足を拘束されて薬を多量投与されるというマンガみたいなケースも起きています」(同)という。仮に、この現状が本当なのだとしたら、業界、政治、そして家族までもが一体となり、薬によって甘い汁を吸っているということになる。
このように業界関係者に聞くと、我々の健康を守るはずの薬が金の種になり、「患者の健康」という本来守るべき大前提が置き去りにされているケースも報告されている。サイエンスライターのへるどくたークラレ氏は明かす。