――2012年は脱法ハーブによる事件や事故が立て続けに起こり、社会問題となった。アクセスが手軽だった脱法ハーブを経験したことがある中学生や高校生は少なくないといわれるが、実際のところ、中高生を含む今の10代はどんなドラッグに手を出しているのだろうか? また、薬物を用いる動機とは何なのか? “当事者”たちに話を訊きながら探りたい。
生育する大麻草。この花穂や葉を乾燥させた加工品をマリファナと呼ぶ。(c)Pablo
その日本社会の裏側へと通じるゲートウェイ(入り口)を知ったのは、ひとりの少年との出会いがきっかけだった。
「職業はプッシャー(売人)です」
東京近郊に住むヒロシ(仮名・17歳)は何ともなしに言う。背恰好は小さく、幼い顔立ちをしているが、筆者を見据える目は鋭く、妙な色気もある。それは、10代の音楽シーンを探る取材の一環で、ヒロシはなかなかセンスの良いDJだという触れ込みで紹介された。訊けば高校を1年で辞めてしまったとのこと。仕事は何をしているのかという問いに、冒頭の答えが返ってきたのだった。
「ただ、自分では売らないで、後輩にさばかせてます。もともとは振り込め詐欺をやったり、あと、同級生の女を使って援交の元締めをやってたこともあったけど、そういうのって、何かオチるんで。工場の窃盗も、最近は未成年からは買い取ってくれなくなっちゃったし。楽しくて、儲かる仕事がいいなと」
最近の若者には欲望がない──と不満げに言う人たちがいる。世代間の価値観の違いによるモラル・パニックは、日本でも延々と繰り返されてきた現象だが、それが、“おとなしい若者”なる、従来のパブリック・イメージの反転に対する困惑という形を取り始めたのが、ここ数年の傾向だ。いわく、「最近の若者は物を買わない」「最近の若者は政治に関心がない」云々。では、犯罪、特に薬物に関してはどうなのだろうか。