――2013年のプロ野球は、「55本タブー」がついに破られた記念すべき年になった。一方で、“統一球”と呼ばれる新規格のボールに関して、NPB側が変更を明らかにしていなかったことが発覚し、それに伴い加藤良三コミッショナーの退任も発表されるなど、球界の運営に関する問題点が噴出した年でもあった。閉鎖的な球界において、残る根深いタブーを検証する。
『野球にときめいて 王貞治、半生を語る』(中央公論新社)
巨人と楽天がペナントを制し、目下、両リーグでは日本シリーズへの出場権を賭けたCS(クライマックスシリーズ)が絶賛開催中と、今季のプロ野球もいよいよ大詰め。日本一の行方とともに、来シーズンに向けた各球団の水面下での動向にも注目が集まる季節となってきた。
というわけで、今なお球界に厳然と存在するタブーにメスを入れるべく独自取材を敢行。今年は「55本タブー」【王 貞治氏のシーズン最多本塁打記録を破ってはいけないという動き】が、ヤクルトのバレンティンによってあっさりと破られた年だったが、残る禁忌は何か? 有力選手・OBにささやかれる黒い交際から日本野球機構(NPB)内での主導権争いまで、スポーツメディアが決して報じないその舞台裏を文字数の許す限りお伝えしたい。
まずはチーム強化の要ともいえる監督人事から。大手スポーツ紙記者は次のように解説する。
「注目はやっぱり高木(守道)監督が退任した中日でしょうけど、待望論が根強いのに立浪(和義)さんにすんなり決まらないのは、オーナーの白井(文吾)さんが彼の黒い交友関係に難色を示しているから。そもそも名古屋という土地柄を考えても、立浪さんあたりの年代で暴力団との関わりのない人なんてまずいない。9月末に報じられた落合(博満)さんの復帰が現実味を帯びてくるのも、そういうところに原因があるんだと思います。2年前の解任劇のときにも、白井さん自身は落合さんの続投を支持していたという経緯もありますしね。
ちなみに、最下位なのに一転、小川(淳司)監督の留任が決まったヤクルトは、今季で引退した宮本(慎也)さんの存在がネックというのがもっぱらの見方。彼は強烈なキャプテンシーを持つと同時に、球界全体にニラミを利かせられるほどの政治力をも併せ持つ人だから、反発する人も多い。彼の影響力が強いうちは(監督を)やりたくないと言っているOBもいるくらいです」
企業コンプライアンスの徹底が叫ばれる昨今、各球団が“反社会的勢力”との関係にことのほか敏感になるのは時代の流れ。そうした姿勢は当然、ドラフトやトレードといった編成面にも色濃く反映されている。前出記者が続ける。
「今やどんなに有望な人材であっても、事前の身辺調査で近しい人間に暴力団関係者がいることがわかれば、指名を回避するのが常道。聞いたところでは、今年の夏に甲子園で活躍した超高校級の某選手にも、そういった話があるようです。
フリーエージェントが有力視されている西武・涌井(秀章)にしたって、人気球団が率先して手を挙げないのはまさしくそこ。西武としても、親会社の西武鉄道が再上場を目指している最中ということもあって、暴力団とつながりが深いとされるマネジメント会社との契約があるなど、かねてその関係性を指摘されてきた彼のような存在は極力排除したいというのが本音なんですね。彼ほどの大物選手が、女遊びが激しいってだけであそこまで露骨に冷遇されるなんて、普通は考えられませんからね」