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萱野稔人の"超"現代哲学講座 第39回

竹島が持つ領土問題以上の意味

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──国家とは、権力とは、そして暴力とはなんなのか……気鋭の哲学者・萱野稔人が、知的実践の手法を用いて、世の中の出来事を解説する──。

第39回テーマ「竹島が持つ領土問題以上の意味」

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[今月の副読本]
『陸と海と 世界史的一考察』
カール・シュミット著/慈学社出版(06年)/2415円
地球の3/4を占める水=海。かつての歴史研究は陸地を中心に考えられており、生活の基盤となるのは陸であった。しかし、産業にとっては海が必要である──。これまでの歴史概念を覆した、ドイツの政治学者による一冊。


 日本は島国だといわれますが、それでも周辺諸国との国境はいまだに画定されていません。領土問題は日本にとって古くて新しい問題です。「古い」というのは、北方領土や竹島の領有権をめぐる問題は戦後ずっと続いてきたからです。しかし、その竹島に2012年8月、韓国の李明博大統領が上陸したり、日本政府が尖閣諸島を2012年9月に国有化したことに対して中国政府が猛反発したりと、ここにきて領土をめぐる周辺国との緊張関係はふたたび高まっています。領土をめぐる係争があ、らためて「問題」として浮かび上がってきたんですね。「新しい」というのはそういう意味です。

 読者のなかには、なぜいまさら領土問題なのか、と疑問に思う人もいるかもしれません。実際、グローバリゼーションによってさまざまなものが国境を簡単に超えるようになり、国境の意味も領土の意味もこれまでより小さくなったはずです。にもかかわらず、誰も住んでいない離島(そもそも竹島は0.23平方キロしかない岩礁であり、自然のままでは人が住めません)の領有権になぜいまさらここまでこだわるのでしょうか。

 とりわけナショナリズムに批判的なリベラルな知識人は、領土問題を「大した問題ではない」と過小評価したがります。領土問題が過度に「問題化」されることでナショナリズムが激化することを警戒するからです。先日も、あるリベラルな論者と話していたら、「尖閣諸島を防衛するために多大なコストをかけるぐらいなら、さっさと中国と取引をして譲ってしまったほうがいい」というようなことを述べてきました。グローバリゼーションの時代、領土にこだわるのは時代遅れで合理的ではない、ということでしょう。

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