──地上波でしか映像を見ない視聴者にはあまり知られていない一方で、会員500万人を超え波に乗るケータイ向け動画配信サービス「BeeTV」、そして苦戦しながらもなんとか会員100万人を突破したケータイ向け放送局「NOTTV」。そこで配信・放送されているドラマはどのようなものなのか? そしてその制作体制は、地上波ドラマとは違うものなのか?
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映像の視聴形態が多様化する現在、スマートフォンをはじめとした携帯電話での映像視聴の一般化も進んでいる。その筆頭はYouTubeやニコニコ動画などの無料動画視聴サイトであろうが、課金システムを用いた有料視聴も、それなりの広がりを見せているのだ。
2009年、NTTドコモがエイベックス・エンタテインメントとの合弁で「エイベックス通信放送」を立ち上げ、ドコモ携帯向けの「BeeTV」を設立。12年には、同じくドコモ向けのサービスとして、ドコモグループのmmbiが運営する「NOTTV」が開局。13年12月には、ソフトバンク専用のUULAの開局も発表された。こうした「モバイル放送局」、まだまだ加入者数は伸び悩んでいるが、一時は次世代の放送メディアとして地上波テレビ放送を飲み込んでしまうのでは? とさえいわれていた時期もあった。そのモバイル放送において、ドラマというコンテンツはどのような位置づけにあるのだろうか?
そもそもは同じドコモのコンテンツとして“放送”されているBeeTVとNOTTV。一見すると競合するようにも見えるが、これについてITライターの三森黒介氏はこのように語る。
「NOTTVはVHF Hiバンドという、もともとアナログテレビ放送で利用されていた電波帯を使ってスタートしたれっきとした『放送』であるのに対して、BeeTVは携帯回線のストリーミング機能を使ったネット『配信』なので、基本的には別のものです。ただ、ユーザーから見れば同じように利用できる映像コンテンツであることに変わりはなく、そうした違いはあまり意識されていないでしょうね」
では、この2サービス、コンテンツにおいてはどのような特徴があるのか見てみよう。
NOTTVは、『AKB48のあんた、誰?』や多数のグラドルが出演する『アイドル☆リーグ!』などのアイドル番組、欧州チャンピオンズリーグやドイツ・ブンデスリーガなどのサッカー番組など、コアな視聴者が確実に食いつくものに番組編成を絞っている印象がある。結果一定の視聴者を獲得はしたものの、当初は対応機種の少なさもありその後の契約数は伸び悩み、13年6月になんとか契約数100万件を突破した。
しかし、先行してスタートした一方のBeeTVは、11年11月よりドコモのスマートフォン向け総合動画配信サービス「dマーケット VIDEOストア」(現在は「dビデオ」に改称)においても配信が開始されたこともあり、現在の契約者数はすでに500万人超を誇っている。そして、その人気の理由のひとつが、多くのオリジナルドラマの存在なのだという。あるテレビ制作会社のプロデューサーA氏はこう語る。
「BeeTV向けのオリジナルドラマを制作しているのは、地上波テレビ向けドラマを制作しているのと同じ制作会社が多いですね。ただ、コンテンツの内容は大きく異なる。BeeTV向けコンテンツの特徴をひと言で言えば、『チャラさ』です(笑)。それは、親会社であるエイベックスの社風から来ている面もあると思いますね。あの会社、ホストみたいな茶髪の社員が異常に多いですから。エイベックスから繰り返し言われるBeeTVで意識すべきターゲットは、F1層(20~34歳の女性)、F2層(35~49歳の女性)、そしてヤンキー男性。当初BeeTVはガラケーでしか視聴できなかったので、ガラケーユーザーにその層が多いからということが大きいとは思いますが」
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一昔前は、F2層であれば韓流というキラーコンテンツがあったが、現在、韓流ブームが下火となっている。では、いまBeeTV向けに制作されているのはどのような作品なのか?
「簡単にいえば、女性向けのズリネタでしょうか(笑)。BeeTVのメインターゲットである層の女性は、パソコンよりも携帯で動画を見る傾向が強い。どこでいちばん見ているのかというと、布団の中に潜り込んで寝る前なんです。だから、周りを気にせず見られる刺激的なショートストーリーが好まれる」(制作会社プロデューサーB氏)