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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第71回

射殺事件の無罪判決で蘇るもうひとつの惨劇

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雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『フルーツベイル・ステーション』

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2008年の大晦日、アフリカ系の黒人であるオスカー・グラントは母親や自身の恋人、娘たちといつもの日常を過ごしていた。しかし、09年の元旦、オスカーは鉄道警察に無抵抗のまま拘束され、射殺されてしまう――。全米を揺るがせた射殺事件を基に、被害者・オスカーの一日を再現している。

監督/ライアン・クーグラー 出演/マイケル・B・ジョーダン、オクタヴィア・スペンサー、メロニー・ディアスほか 日本での公開は未定


 7月13日、17歳の少年トレイヴォン・マーティン君を射殺したジョージ・ジマーマンに無罪判決が出た。

 2012年2月、夜7時頃、フロリダ州の住宅街で、トレイヴォン君は、近所のコンビニでアイスティーを買って、夜道を歩いていた。そして彼を背後から尾行していたジョージ・ジマーマンと、もみ合いになった。ジマーマンはボランティアで夜回りをしていて、トレイヴォン君を犯罪者だと思ったのだ。そしてもみ合いの最中、ジマーマンは拳銃でトレイヴォン君の左胸を撃ち抜いた。彼は自分が拳銃を持っていることをトレイヴォン君に言わなかった。

 しかし、フロリダの陪審はジマーマンを正当防衛で無罪とした。銃で武装する権利を主張するアメリカ人は拍手した。しかし、それ以外の人々は驚いた。拳銃を隠し持って誰かにケンカを売って、殴り掛かってきたら撃ち殺しても無罪なのか? トレイヴォン君は何も武器を持っていなかったのに。いや、そもそもジマーマンはなぜトレイヴォン君を犯罪者だと決めつけたのか?

 彼が黒人だからか?

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