──耳は口ほどにモノを言う。教えて、あなたの好きな音!
(写真/三浦太輔 go relax E more)
Touching song
クインシー・ジョーンズ
『愛のコリーダ』
マイケル・ジャクソンなどを手がけた世界的音楽プロデューサーが1981年に発表したアルバムに収録。「Your dream is my command(あなたの夢が私を操る)」と歌われる。
キリンジさんと椿屋四重奏さん。「好きな音楽は?」と聞かれて真っ先に思い浮かべるのが、このおふたかたです。でも、ライブに行って彼らの吐息や実像に触れ合いたいとは思いません。音楽誌の対談で中田裕二さん(椿屋四重奏)にお会いしたこともありますけど、キャッキャッなんてできなかったです。だって、ミーハーみたいでめんどくさくないですか? 中田さんに「めんどい」って思われたくなくて、その対談でも自分なりに距離を取ったつもりです。
たぶん、歌詞が一番大切なのだと思います。
たとえば、キリンジさんの「ロマンティック街道」という曲。簡単に言ってしまうと、主人公の男性は〈君〉と歌う女性と結ばれるわけではない内容なんですけど、妄想が広がる歌詞なんです。主人公の男性は、彼女が結婚するという選択に対しては彼女の幸せのために耐えることができるんだけど、浮き彫りになってしまった心の寂しさや闇みたいな渇きは誰にも潤せないとも気づく。彼女が幸せであればあるほど自分はうれしいんだけど、そんな幸せに包まれた彼女の光が、結果的に自分の影を浮き彫りにしてしまう。「好き」という感情って、いろいろなカタチがありますよね。もしも、自分の心の闇を浮き彫りにしてくれるからその人を「好き」なのだとしたら、その「好き」はどうしようもない感情なわけで……。