サイゾーpremium  > 連載  > 小原真史の「写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~」  >  写真時評~モンタージュ 現在×過去~【17】
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写真時評~モンタージュ 現在×過去~

写真から鳴り続ける妻の死の残響

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「伊豆」(1978年)

「表象」「上演」「代理」を指す「representation」という言葉には「喪の黒布で覆われた空の棺」という意味があるという。写真も不在の死者を「再現前」させるメディウムのひとつだろう。古屋誠一はこの写真によって亡き妻の「喪の作業」を長く続けてきた。

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「ウィーン」(1983年)

 1978年、古屋はオーストリアのグラーツでクリスティーネ・ゲッスラーと出会い、結婚する。初めて彼女を撮影したのは、古屋が下宿するアパートだった。このときから古屋はファインダー越しに彼女の姿を見続け、クリスティーネもまるで役者のようにさまざまな表情を見せてゆく。2人にとってカメラを介したコミュニケーションは、日常の一コマだったはずだ。その後2人の間に息子が生まれ、クリスティーネも母親としての雰囲気をまとい始める。国際結婚ではあるが、どこにでもあるような幸せな家庭のように見える。

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