ネット選挙の明暗を分けたものとは?
第23回参院選の東京都選挙区から立候補した、無所属新人の山本太郎氏と、民主党現職の鈴木寛氏。共にネットをうまく活用しながら選挙活動を展開し注目を集めたが、前者は当選し、後者は落選してしまった。彼らの明暗を分けたものとは、いったいなんだったのだろうか?
批判も多かったが、結果としてネット選挙の“メリット”を最大限に生かすことのできた山本太郎陣営。
A:IT政策に強いジャーナリスト
B:全国紙の政治部若手記者
C:ネット系広告代理店の社員
A 7月21日に投開票され、自民党が圧勝した今回の参院選は、初めて「ネット選挙」が解禁されたことに注目が集まりましたね。
B これまでは、ネットにおける公式な選挙情報は投票日くらいでしたが、今回からは選挙公報がネット上で公開され、候補者もネット上で普通にブログやツイッターができるようになりました。
A 実はこのネット選挙、自民党内部では、小泉政権時代の2005年からワーキングチームを置いて検討していたものです。その後民主党が政権に就いた09年にも与野党協議がなされ、自民党が公職選挙法【1】の改正法案を提出したことで、解禁へと流れが向かいました。ところが震災や与野党対立によって立ち往生し、結局は廃案に。それが12年12月の衆院選で自民党が政権復帰したことによって復活し、今年の4月19日には早くも改正案が可決されたというわけです。
『ネット選挙』
安倍首相をはじめ、政治家によるツイッターやフェイスブックでの情報発信が注目されるなか、7月21日に第23回参議院議員選挙が行われたが……。
B 実は自民党は、ネット上での選挙活動の実現というよりも、選挙期間中にネット上で有権者の政治的な発言【2】が増えることを期待していたんです。というのも、自民党は選挙期間中、党本部にネット分析チームを設置し、ネット上の人々の発言を分析することで、選挙区ごとの情勢や有権者が興味のある話題を日々追いかけて選挙戦に活用していたんです。候補者にiPadを配布して候補者が直接見られるようにして、日々の演説に生かせるようにまでしました。この分析精度を高くするには、選挙に関する有権者の発言が増えたほうがいい。自民党が改正成立を急いだのは、参院選でそれを活用して勝利を確実なものにし、衆参のねじれを解消したかったという意図もあるわけです。
C 確かに、個々の候補者レベルでは野党側にもネットをうまく使った人はいましたが、組織としては自民党の圧勝でしたね。