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「テクノロジーから見る! 業界アウトルック」No.10

「杉沢村」のロマンには太刀打ち不能!?消えては現れる”泡沫ネット怪談”の現状

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もはやどんな事物もテクノロジーと無関係には存在できないこのご時世。政治経済、芸能、報道、メディア、アイドル、文壇、論壇などなど、各種業界だってむろん無縁ではいられない──ということで、毎月多彩すぎる賢者たちが、あの業界とテクノロジーの交錯地点をルック!

[今月の業界と担当者]
オカルト業界/吉田悠軌(怪談・オカルト研究家)

 夏といったらやっぱり怪談・オカルト! 「オカルト」とは「その時代の一般に証明されえない怪しげな情報」と定義できる。どんなに情報網が発達しようとも社会の裏には隠された真実があるのでは? という疑念がつきまとう。すなわち、IT技術が発達すればするほど、その陰画としてオカルトは機能していくのである……。

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「杉沢村」とされる廃村にある朽ち果てた民家。青森駅から車で約20分ほどの距離。恐怖のかけらもあったもんじゃない!(写真/吉田悠軌)

 日本における怪談とIT。その初期の重要点は、90年代末からはやりだした「杉沢村伝説」だろう。

 青森県のとある場所に、廃墟となった村がある。その入り口は、朽ちた鳥居とともに「ここから先に進めば命の保証はない」との看板が目印だ。気をつけねばならない。この村には狂人とも幽霊ともつかない謎の殺人鬼がおり、入ってきたものに襲いかかろうとしているのだから。そこは昭和初期、発狂した若者により村人全員が惨殺された村であり、今でも現れては消え、さまよえる幻の場所。それが「杉沢村」である。

 ……といった噂が、インターネットの普及と重なり大人気を博した。伝説の内容も広がっていき、実際の事件「津山三十人殺し」を元ネタにした尾ひれがつけられたり、杉沢村を探し当てようとする者も続出。伝奇趣味あふれる内容と「実際に発見できるのでは?」というロマンが、90年代末当時のネット住人に受けた理由だろう。さまざまな考証と検証を好き勝手に話し合える杉沢村伝説は、大衆化しはじめたネットにおいて格好のコンテンツだったのだ。

 だが「杉沢村」なる地名は存在したこともなく、噂の内容は根も葉もない空想にすぎない。一応のモデルとなった廃村はあるので、ついこの間の6月に私も訪ねてみたところ、青森駅から車で20分ほどの距離とアクセスは非常に容易。それでも昔は木々に囲まれた「隠れ村」的な雰囲気だったのだろうが、現在は廃棄物処理場が建てられたため周囲も開けており、杉沢村の象徴とされた「鳥居」も道路沿いから一目で発見できたりと、ロマンの欠片もあったものではない。鳥居の傍には廃棄物処理のためであろう巨大な穴が掘られていて、どこか伝説の終焉を象徴しているような物悲しさがあった。

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