世界で初めて写真が撮られたニセフォール・ニエプスの実験室内。
1827年7月、ニセフォール・ニエプスは、ブルゴーニュ地方のサン=ルゥ=ド=ヴァレンヌ村にある館の二階の窓から世界初の写真撮影に成功する。カメラは「小さな部屋」という意味であるから、実験室に穿たれた窓より差し込んだ光がレンズを通ってもう一つの部屋(=カメラ)に写しとられたことになる。カメラの中のカメラ。ニエプスの最初の写真から思い浮かぶのはそんなイメージである。「ル・グラの窓からの眺め」と題されたこの写真によって、ニエプスの実験室からのありふれた眺めは歴史的な風景として知られるようになった。中庭の鳥小屋や屋根、梨の木などが写っているとされるこの写真は、事物を一瞬のうちに写しとるという人類の夢が成功したことを示していた。