──ここまで、事務所側のビジネスの話を中心に見てきたが、実際、現場の声優たちはどのような生活を送っているのだろうか。ここでは、3人の現役声優に集まってもらい、その苦しい懐事情を聞かせてもらった。
[座談会参加者]
A…事務所所属のベテラン声優
B…事務所預かり所属の新人声優
C…フリーの新人声優
毎年、新人発掘オーディションでチャンスを掴む人も。
A 私は今の事務所で20年くらい活動をしているんですが、2人も事務所に所属を?
B 僕は、今の事務所が3つ目になります。前の事務所には2年ほど在籍していたんですが、契約更新のタイミングで切られてしまって。前年の活動内容をもとに、今年もその契約がお互いに有益かどうかを話し合ったんですが……まあ、簡単に言えば、思うように売れなかったんですよね(苦笑)。今の事務所も、まだ“本所属”ではなく、仮契約段階の“預かり所属”です。
C 僕は今27歳なんですが、声優を目指し始めたのが遅かったので、去年から養成学校に通いながら、知り合いのツテでもらったナレーションの仕事を始めたところです。レッスンとナレーションの仕事の時間以外は、バイトをしまくってますよ。
B 僕もバイトは週5でしてます。まだレギュラーの仕事がないので、単発の仕事を受けつつ、知り合いのプロデューサーからおこぼれの仕事をもらっている状況です。
A 新人さんは、声優の仕事だけではとてもじゃないけど食べてはいけないよね。『アラタ カンガタリ~革神語~』で主演をやっている松岡禎丞くんも、つい1~2年前までカラオケ屋でバイトをしてましたよ。ここ2~3年は、相当な数のアニメに出ているはずですけど。
C 松岡さんくらいの売れっ子でも、やっと声優だけで食べていけるようになったところなんですね……。
B アニメのギャラは“ランク制”で統一されているんですが、一番下のジュニアランク(詳細はこちらの記事のボックス参照)だと、1本の仕事につき一律1万5000円。12時間しゃべり続ける仕事だろうが、一言だけの仕事だろうが、値段は1仕事で計算されます。このランク制の最上部には、ブルース・ウィリスの吹き替えなどで知られる故・野沢那智さんらのような、ギャラに規定のない“ノーランク”と呼ばれる“殿上人”もいますよ。
A ランクはある程度活動年数に左右されるので、ジュニアランクのうちに爆発的に売れても値段は変わらないんですよね。だから、ジュニアランクのうちに週に3本レギュラーを持ったとしても、4万5000円。事務所に取られるマージンは10~20%なので、そこから源泉の10%も引けば、本人の手元に残るのは3万円くらい。月額にしたら12万円ですから、それだけじゃ食べてはいけないですよね。CS局の番組なら、ギャラがさらにその半分になることもありますし。
B ちょっと待ってください! 10~20%のマージンで済んでいるんですか!? うちの事務所は本所属の人でも30~40%、預かり所属なら45%も取られますよ。