サイゾーpremium  > 特集2  > 【ポルノデビュー】も!?村上春樹"巨匠化"以前のトホホなお仕事
第2特集
村上春樹"100万部超"の作り方【5】

ポルノレビューから等身大グラビアまで 春樹”巨匠化”以前のトホホなお仕事

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──87年発表の『ノルウェイの森』で巨匠となる以前の春樹は、出たがり出したがりでヘンなポーズのグラビアも全然オッケーだった !?特に日本のメディアには滅多に登場しなくなった今ではすっかり忘れ去られている、イケイケ若手作家時代の春樹に迫る!

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【1】ジャズ喫茶屁理屈コラム
「ジャズ喫茶のマスターになるための18のQ&A」
(海潮社「ジャズランド」75年8月号)

■発言は青臭いが、店長としての大物感はアリ
春樹流のウィットに飛んだQ&Aを展開。「ジャズ喫茶マスターに一番要求される資質は?」という質問に「恐れを知らぬ行動力です」、「一番不要なものは?」には「知性です」と回答。「結婚していた方が得か?」には「この世の中で結婚して得することなど何ひとつないのです」と答えているが、春樹流ジョークか。その後の安西水丸との対談(小学館「GORO」84年2月23日号)で「いまの結婚で十分におもしろかったと思っている」と発言するなど、実際は愛妻家として知られる。


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【2】ロマンポルノ言い訳レビュー
「防衛庁の隣りで、階級闘争的なにっかつポルノを観る。」
(平凡社「太陽」81年4月号)

■新進気鋭作家の調子に乗ってる、あの感じ
にっかつロマンポルノ『OL縄奴隷』評。冒頭から「言い訳がましいようだが、今月とくに性欲がたかまったというわけではなく、日程の都合で偶然こうなってしまった」と言い訳し、「銀行の女子行員という下部労働者を、より下部の労働者である集団就職の青年たちがいたぶる」ことは「階級闘争的」で、「ポルノグラフィティー幻想は中産階級的幻想に通じる」と小難しい論旨にすり替え。行間から「意味不明なところがボクっぽいでしょ?」という声が聞こえるのは気のせいでしょうか。


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【3】龍とのビミョー対談
『ウォーク・ドント・ラン』
(81年、講談社、現在は絶版)

■「絶版」ってことは、そういうことですよね?
村上龍(52年生まれ、76年デビュー)と春樹(49年生まれ、79年デビュー)の対談本。「ぼくだって村上龍氏みたいに書きたいと思うときもあるのよ」「本当にね、心のうちを洗いざらいね、ぶちまけたいと思うときがあるよ、やっぱり。それがなきゃね、小説書く意味はないと思うんだね。(中略)でもそのへんはなんか、性格的なものですね、どうしてもATS【編注:自動列車停止装置】がきいちゃうのね」と春樹。「春樹さんと話してると、自分が、熱と怒りの権化みたいに思えてくるよ」と龍。表向きは互いに敬意を表してるけど雰囲気ビミョーです。


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【4】著作権論考コラム
「ヴィデオの登場は8ミリ・フィルムを追い払った。テープ・デッキの技術革新と貸レコード店がレコード産業をゆるがしている」
(中央公論社「海」82年10月号)

■実名で音楽産業批判は何か不都合でも?
寄稿者は「牧村拓(ひらく)」だが、ファンの間では春樹とが書いたとされる(牧村拓は88年『ダンス・ダンス・ダンス』の登場人物で、MURAKAMI HARUKIのアナグラム)。1ページの評論で、貸レコード店がレコード産業を揺るがしていることについて「メディアは当然変化しつづける。(中略)筋から見れば不思議な事件でもないし、間違った現象でもない」と肯定している。まだ“JASRACに著作権使用料を支払う”といった法整備がなされる前の話である。現代の『1Q84』海賊版電子書籍の販売問題や、自炊代行問題にも通じる、なにげに深い話。


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