──書籍編集者の夢のひとつともいえる100万部超えの”ミリオンセラー”。会社や著者には多額の利益や印税がもたらされるが、こうしたメガヒットを裏で支えた編集者にはどのように還元されるのだろうか? その実情を見ていこう。
『電車男』(新潮文庫)
不況の叫ばれる出版界でも、今回の村上春樹の新作のように、時折現れるミリオンセラー。発行元の出版社に巨額の利益をもたらすのはもちろんのこと、その出版を企画した編集者もさぞかし厚遇を受けているのでは……。そんな推測から、ミリオンセラーを手がけた編集者に話を聞いてみたが、現実はそうとも言えないようだ。
「かつて乙武洋匡氏の『五体不満足』(98年/550万部/講談社)を企画した編集者や、2ちゃんねるスレッドをまとめた『電車男』(04年/101万部/新潮社)の編集者などは出世を遂げたという話を聞いています。自分も通常の2倍のボーナスが出ました。著者には1億円超の印税が入るので、それで家を建てたといった話も聞きますが、サラリーマンである編集者に入るお金はそれくらいです。また、自分の立てた企画が通りやすくなるなど、社内的な立場も良くなりました。しかし他社の編集者では、100万部を売ったのに大した評価もされないと、逆に不満を募らせている人もいますね」(中堅出版社の編集者)
1冊当たり、著者印税を除く6割が粗利となる出版業界において、100万部が売れると数億円の収益が立つ計算になるのだが、編集者にはそこまで還元されないようだ。小出版社でミリオンセラーを出した編集者にも話を聞いたが、「ウチはもともとボーナスすらないし、自分もいつクビを切られてもおかしくない状況ですよ」と、さらに悲惨な状況だった。