森山大道『プロヴォーク』第2号より(1969年/ゼラチン・シルバー・プリント/東京都写真美術館蔵)
1968年、パリ大学ナンテール校に端を発した五月革命は、日本写真へも飛び火し、同年11月、伝説的な同人誌として知られる『プロヴォーク』(英語で「挑発する」を意味する)が創刊される。同人には評論家の多木浩二、写真家の中平卓馬、詩人の岡田隆彦、写真家の高梨豊、写真家の森山大道(2号から参加)らが名を連ねており、「アレ・ブレ・ボケ」と称されるような不鮮明な写真とともに、芸術や文化、政治、思想までをも射程に入れた批評が掲載され、写真という枠を越えて大きなインパクトを与えた。既存の写真美学――整った構図、シャープなピント、美しいグレーの諧調など――を大きく逸脱した『プロヴォーク』の荒々しい画像は賛否両論を巻き起こし、写真表現のラディカリズムを牽引する。