――「黒歴史」とは、今思い返すと恥ずかしくて誰にも知られたくない過去のこと。そこで、食品メーカーがこれまで世に送り出しては消えていった食品や飲料を探り、考察した。
『まだある。食品編』(大空出版)
日本に来た外国人が買い物に行った時、最初に驚くことはスーパーやコンビニに並べられる食品の種類の多さであるという。新製品は日進月歩、毎日のように発売されているのだ。おなじみの商品に関しても数年ごとにマイナーチェンジが行われたり、シリーズ化されることはよくある話である。例を挙げれば、日清食品の「カップヌードル」が、数年前から「ミルクシーフード味」や「ブラックみそ味」など、名前からは味が想像しづらい新製品を乱発していたり、俗に「謎肉」と呼ばれていた具の加工肉を、「コロチャー」と呼ばれる実際の肉に近いものに変更したことは、本誌読者もご存じのことかと思う。
「昔から、モノを改良するのが得意な日本人らしい傾向ですよね。そうして発売された数々の商品の中には、大ヒットして現在では定番の商品になっているものもある一方、それよりはるかに多くの商品が消費者から支持されることなく、店の陳列台からも人々の記憶からも消えうせてしまうのです」(フードアナリスト)
企業が必死の努力の末生み出した商品が、なぜそのような結果になってしまうのか? 今回は食品にテーマを絞って、商品の「黒歴史化」を検証してみたい。
黒歴史商品の主立った商品はこちらの記事で紹介するが、そういった商品が生まれる要因は、まず単純に「味が受け入れられない」ことが挙げられる。単刀直入にいえば商品が「まずい!!」ということであるが、しかし消費者の味に対する支持は、時代や場所によって大きく変化するのだ。例えば同じくこちらの記事に挙げたタブクリアは、日本では売れなかったものの、先に発売されたアメリカではロングセラー商品となって今でも販売されている。
「タブクリアに使用されていた人工甘味料は、アメリカでは何十年も前から低カロリー炭酸飲料に使用されており、肥満対策としてそれらを飲む習慣のあるアメリカでは、おなじみの味だったのです」(輸入代理店関係者)
また95年に発売されたものの、1年で消え、“幻の飲み物”といわれているQUAN FOO(カンフー)は、多くの漢方スパイスを使用したものであり、当時飲んだ人はジュースというより、怪しげな薬を飲んだような感覚を受けたのではないだろうか?
「サントリーには、『ウーロン茶を超える中国茶を生み出す』という意気込みがあったそうです。そのためCMには、当時人気がうなぎ上りだったSMAPの香取慎吾を起用するなど、QUAN FOOに対し莫大な費用をかけました。しかし売り上げはさんざんな結果になりました。これはCM業界では、“やっちゃった感”のある代表的な『黒歴史商品』とされています。香取にとっても黒歴史でしょうね(笑)」(広告代理店関係者)
しかし現在では、紹介した商品が発売された当時に比べ、さまざまな味の清涼飲料水が発売されており、また食材の多様化などにより、日本人全体の味覚は大きく様変わりしている。そのため今はひょっとすると、黒歴史商品の再発売のチャンスの時期なのかもしれない。