──食べ物の話をするのが好きで、食べるのも好きな日本人の国民性ゆえか、ウェブ上においても食に関するサービスは発達している。本稿では、「食べログ」「ぐるなび」「クックパッド」といった人気サイトを中心に、そのビジネスの伸びしろと陥穽、そして食文化への貢献度を検証する。
『クックパッド社員の名刺の秘密』(講談社)
まだケータイやスマホが普及していなかった頃、慣れない街で外食をすることは一種のギャンブルだった。道を歩いていて目に付いた飲食店の店構えをじっくり品定めし、鼻を効かせて漂う匂いを嗅ぎ、覚悟を決めてエイヤっと飛び込む。当たりを引けるかどうかは一発勝負で、経験と勘が試されたものだ。
時代は移り変わり、2013年の東京では、スマホでサッと検索するだけで“美味しい飲食店”の情報が簡単に引き出せる。口コミ評価をチェックして評判の人気店に入ればハズレを引く心配はないし、飲み会の会場を探すときは場所や予算などの条件を入力して割引クーポン付きの店を探せばいい。特別に旨いと評判のレストランに足を運んだ日は、すかさず料理を撮影して「これ超おいしい!」とSNSに投稿すれば、無数の「いいね!」が付くという具合だ。
変化したのは外食だけでなく、自炊についても同様。料理経験の浅い一人暮らし初心者であっても、食べたいものを考えてレシピ名で検索する、あるいは冷蔵庫にある食材の名前を検索窓に入力して調べれば、なんとなく食べられるものができる。料理上級者は上級者で、凝った料理の作り方をいくらでもネットから引き出すことができる。重たい料理本をいちいち買わなくてもよくなったのだ。
ウェブとソーシャルの発展によって、我々の食生活はめまぐるしく変化した。ネット上に「食」にまつわる膨大な情報が流通するようになったことで、日本人の食習慣は確実に変わりつつある。