──少し古い話になるが、07年8月16・23日合併号の「週刊文春」(文藝春秋)によると、04年のジャニーズ事務所の法人申告所得は110億円を超えるという。同誌によると、これは数多の芸人を擁する吉本興業でも及ばない──。だが、そんなジャニーズも、所属タレントの人気が目に見えて凋落している。そんなジャニーズのビジネスとはどのような変遷をたどってきたのだろうか? なかなか表には出てこないジャニーズビジネスを検証してみたい。
かつての稼ぎ頭だったSMAPも、いまだ根強い人気を誇る。
日本最強の男性アイドル芸能事務所・ジャニーズ。12年6月に創業50周年を迎え、ますます隆盛を誇っている。
もっとも、これだけの影響力を持ちながら、企業としての規模は驚くほどコンパクトだ。社長の“ジャニーさん”こと喜多川擴、副社長の“メリーさん”こと藤島メリー泰子の2人が実権を掌握し、メリーの娘である藤島ジュリー景子を加えた3人の創業者一族が資産の大半を持つ。過去に発表された長者番付から鑑みるに、この3人だけで毎年、十数億円の収入があるといわれている。
ここにファンクラブやグッズ販売といった裏方の実務を一手に担当する伊豆喜久江、広報担当の白波瀬傑、SMAPのマネージャーとして叩き上げた飯島三智といった幹部が加わって会社を動かしている。
「おそらくジャニーズ本体の社員は、全部で100人もいないでしょう。また、現場社員の給料は薄給で有名、入れ代わりも激しい。一部の幹部だけがすべてを仕切る、完全なトップダウンの会社です。以前、知り合いの芸能プロに元ジャニーズのスタッフが転職したそうだけど、ジャニーズ時代の額面の低さに、芸能プロ幹部が驚いたとか(苦笑)。今風に言えば“ブラック企業”と言ってもいい」(芸能プロ関係者)
長年、ジャニーズ事務所は「ジャニーがタレントを育てて、メリーが売る」といわれてきた。商品となるタレントの発掘・育成はジャニー喜多川の専権事項であり、「ジャニーズJr.」という独特の研究生システムはあまりにも有名だ。そしてこのシステムは、ほかの芸能プロには、到底まねできないものだという。
「普通の芸能プロであれば、スカウトやオーディションなどで見つけたタレントの卵を、レッスンなどで育てながらデビューまでこぎつけます。その間の先行投資は、たとえひとりでもかなりの金がかかる。ところがジャニーズの場合は知名度があるから、黙っていても日本中からいい素材が集まってくるし、その規模もケタ違い。基本的にジュニアのレッスンはタダですが、数百人のレッスン生を抱え続けるなんてことは、ジャニーズくらいの収益がないと、まず無理ですよ」(大手芸能プロ幹部)
大量のJr.の中からレッスンを通じてジャニー氏のお眼鏡にかなったメンバーがピックアップされ、グループとしてデビューすることになる。その人選も絶妙で、メンバーのチョイスや組み合わせから、グループ名、デビューのタイミングまで、すべてを決定するのはジャニー氏だ。常人にはうかがい知れない独特の世界観は、ジャニーズビジネスの根幹を支えるものとなっている。
「ただ、どんなに素質があるJr.でも、基本的に給料は払わない。通常の大手芸能プロでは、見込みのある研究生には給料を払うのが慣例。そうしないと、ほかに引き抜かれる可能性もあるからね。だけどジャニーズの場合はブランド力があるがゆえ、無給がまかり通る」(同)