『日本再逆転への希望』(中央公論新社)
2012年末の第2次安倍内閣の発足以来、株式市場における平均株価の上昇や為替相場における円安傾向など、いわゆるアベノミクスへの期待が沸き上がっている。しかし、実際に安倍内閣が行った施策といえば、日本銀行総裁の人事くらいのもの。成長戦略のための政策は、まだこれからという段階だ。
そして、その成長戦略の中核を占めることになるのが、実はIT政策。就任直後に安倍首相は「情報通信技術(IT)政策担当大臣は、関係大臣と協力して省エネ社会の実現、遠隔医療の実現、自宅で働ける環境の整備等、幅広い分野でIT技術が活用される世界最高水準のIT社会を実現するべく、IT政策の立て直しを検討すること」という方針を明確に示している。
これに従い、本来ならIT政策担当大臣はIT戦略本部を指揮し、IT政策の検討に入っているはず……だが、その肝心のIT政策の中身がいまだまったく見えてこず、関係者をやきもきさせているという。
「実は、肝心のIT政策担当大臣である山本一太議員の存在がボトルネックになってしまっているのです。そのため、IT政策の具体的な策定作業があまり進んでいません」と語るのは、ある自民党関係者。
山本一太
1958年生まれの自民党参議院議員、山本一太氏のこと。06年の第1次安倍内閣成立時にはいち早く安倍支持を表明、現内閣では要職の地位にあるが、良好なテレビ受けと違って、政治家としての力量はイマイチのようで……。
討論番組への出演などメディア露出で国民の認知度は高い山本大臣は、安倍首相と近いことから、今回初入閣を果たした。担当省庁こそ持たない特命大臣となっているが、IT政策担当以外にも、沖縄及び北方対策、科学技術政策、宇宙政策、海洋政策・領土問題担当など、幅広い重要分野を担っている。
「山本大臣は、担当分野の情勢変化がいずれも著しいため、激務を極めています。他の閣僚や有識者との会議、レクと呼ばれる官僚からの情報収集、さらに視察などがあり、毎日が超過密スケジュール。そのせいで、国会における議事をうっかりすっぽかしてしまったり、本会議中に居眠りしていると取られかねない振る舞いをしたり、すでにキャパオーバー気味。このせいで、IT政策の策定に影響が出ているんです」(自民党関係者)