『7つの肌を着替える 美肌メイクのレシピ』(扶桑社)
2月28日、資生堂は、自社が販売する一般化粧品の開発において、動物実験を経た化粧品が3月11日以降EU域内で販売できなくなるのに対応するため、動物実験を行う企業との原料取引や、外部の研究所への実験委託も行わない方針を発表した。同社は、大口輸出先であるEU市場における動物実験規制の流れを受け、2010年から計5回の円卓会議を開催し、動物実験のあり方について議論してきた。11年に同社はすでに自社研究所での動物実験を廃止しているが、今後は他社を利用したものも含めて原則廃止する(一部例外は除く)。今後製品の安全性は、過去の実験で得られたデータや、ヒトのボランティアを対象とした試験などを用いて保証することが可能だという。
「資金力のある大手化粧品メーカーは、新しい成分の開発競争にしのぎを削り、その結果、化粧品の安全性を確かめるために行われる動物実験もなかなか減らないという悪循環」(資生堂関係者・A氏)が起こっていたが、動物実験の実態はとても残酷だ。その内容は次のようなものだ。
例えば、「眼刺激性試験」は誤って化粧品が目に入ったときの症状を見るためのものだが、ここではウサギが使われる。手足で目をこすらないよう、拘束器に入れて頭だけ出し、片方の目に物質を点眼し、もう片方へは投与せず違いを調べる。その状態で72時間以上定期的に観察する。この試験では「ウサギは痛くて暴れ、失禁し、目はつぶれ、腰を抜かして、そのまま死ぬこともある」(同)という。
動物実験
化粧品開発においては、コスト的にも手軽な動物実験が広く行われてきた。その動物実験を、国内化粧品メーカー最大手の資生堂がこのほど廃止すると発表し、業界内では話題になっているという。批判も多い中で、動物実験はなぜ続けられ、マスコミは大きく報じなかったのか? その裏側に迫る。
A氏によれば、このほかにも皮膚刺激試験や急性毒性試験などさまざまな動物実験が行われていたという。
医学や薬学の領域でも動物実験は行われており、それが医療の発展につながってきた面もあるため、一概に動物実験を否定することは難しいかもしれない。しかし、特に化粧品開発においては、動物愛護の観点などから、動物実験を廃止する方向性は世界の潮流になりつつあることも事実である。
この廃止については、欧米企業の取り組みが進んでおり、米国では動物福祉法や情報公開法により、動物実験についての情報が透明化されている。
米国よりもさらに進んでいるのがEUだ。86年以降段階的に規制が強化され、今年3月11日からは、EU域内で動物実験を用いて開発された化粧品の販売が全面禁止となった。同日に発効された禁止措置は、製造元がEU域外の製品も含まれ、すべての化粧品に適用される。
こうした海外の動きの影響により、日本でも動物実験廃止を求める声が少しずつ広がりを見せてきた。NPO法人「動物実験の廃止を求める会(JAVA)」の活動もそのひとつ。
同会理事の亀倉弘美さんは95年にJAVAの化粧品問題担当となり、それ以来、化粧品の動物実験問題にかかわり続けてきた。当初は、動物実験を続けるメーカーの会社名を出すようなことはせず、穏やかな運動を展開したが、「日本の大手メーカーからは、改善の姿勢がまったく見られなかった」と話す。メーカー側からすれば、商品の安全性を保証するため、動物実験に代わる代替手段を確立する手間を強いられるからだ。