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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【6】

児ポ法の悪法たるゆえんを河西智美「手ブラ騒動」に見る

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の”意図”──。

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「手ブラ騒動」
2013年1月、AKB48のメンバー・河西智美の写真集『とものこと、好き?』に掲載された、河西の後ろに立つ男児の手で彼女の胸を隠した写真が「児童ポルノ法違反に当たるのではないか」などとして、大きな騒動に発展。警視庁は、版元・講談社の幹部を事情聴取。こうした動きに対し講談社は、この写真を掲載予定だったマンガ週刊誌「ヤングマガジン」の発売を延期して謝罪。さらに写真集は発売中止に追い込まれた。


 児童ポルノ法は悪法である。この事実を改めて浮き彫りにしたことが、「手ブラ騒動」の最大にして唯一の意義です。

 今回の一件で話題になっている、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、通称児童ポルノ法。1999年に施行されたこの法律の第2条を引用しましょう。

「この法律において『児童』とは、18歳に満たない者をいう」。児童ポルノに該当するものは3つあり、その2番目が、「他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」(通称「2号ポルノ」)です。さらに、ここでいう「性器等」とは、「性器、肛門又は乳首」のことだと明示されています。

 つまり、明らかに18歳未満である少年の手が乳首に触れているあの写真は、この法を文言通り解釈すれば「2号ポルノ」に該当し、完全にクロ。発行元である講談社の責任者や担当者はもちろん、画像を自分のブログに貼り付けたブロガーさえも、児童ポルノ法を厳密に適用すれば全員逮捕。法治国家とは、本来そういうものであるはずです。

 ところが現実にはそんな事態はまず起こり得ない。その意味するところは? すなわち、法律のほうになんらかの欠陥があるということにほかなりません。

 そのことを端的に示すひとコマがありました。刑法学者の板倉宏日本大学名誉教授と元東京地検特捜部の若狭勝弁護士の2人が、夕刊フジの取材に対して、「今回のケースは児童ポルノ法違反には当たらない」と解説したのです。問題は、彼らが児童ポルノ法の条文を覚えていなかったことではない。注目すべきなのは、プロ中のプロである刑法学者や弁護士でさえ犯罪に当たるかどうかの判断を誤るほど、児童ポルノ法という法律が、刑法における常識的な感覚からかけ離れたものであるという点です。

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