──2012年には、年間でおよそ100本ほど発表されたという「動物映画」。そのコストパフォーマンスのよさによって製作ブームとなり、動物モデルのプロダクションの需要も高まっているという。しかし 、そんな映画の裏側で、動物たちにとっては“ほのぼの”してはいられない事情があるようで……。
『犬と私の10の約束』(角川つばさ文庫)
2011年頃から邦画業界で量産傾向にある「動物映画」。ヒットの目安とされる興行収入10億円を突破した作品といえば、近年では08年の『犬と私の10の約束』(15・2億円)が最後で、決してキラーコンテンツとは言い難い。しかし、動物をメインキャストに据えることで人件費が比較的抑えられ、また子どもから大人まで幅広い層の集客を見込めるため、不況のご時世でも費用対効果はそれなりに期待できる“安全牌ジャンル”として重宝されている。そうでなくても日本は震災以降、娯楽に“癒やし”や“絆”といった要素を強く求めるようになった節があり、往々にして愛らしい小動物と人、さらにその家族との絆が描かれる動物映画は、時流に乗ったジャンルともいえるだろう。
しかしながら、ここであえて疑問を呈したい。見る者に癒やしを与え、絆の大切さを教える動物映画……そう言い切ってしまって本当にいいのだろうか? 観客の目に届く動物たちの姿は、あくまで映画作品の中での“完成形”だ。人間の演者とは違い、言葉すら通じない動物たちがやすやすと指示通りに動けるはずがない。したがって、完成形に至るまで、動物たちは無理を強いられる羽目になる。その時点で「動物虐待」といえなくもないが、一般社団法人「国際どうぶつ映画協会」の事務局長を務める高野暢子氏いわく、「ひどい場合は演出のために殺してしまうこともある」という。