『14歳からわかる生活保護』(河出書房新社)
2012年12月に誕生したばかりの自民党・安倍晋三政権が、「生活保護費の大幅引き下げ」を打ち出した。これにより1100億円ほどの予算を浮かせる計算だという。その一方で、借金をいとわず10兆円規模の補正予算を組み、公共工事をガンガンやるというのだがら、生活保護費のカットなど焼け石に水でしかない。
なのに、世間の大きな反発を生んでまで、性急に生活保護費カットに動いたのは、なぜか? ある厚生労働省の関係者が告発する。
「実は社会保障費の抑制という建前とは裏腹に、計算し尽くされたある利権が動いている。心身を壊しがちな受給者に欠かせない、クスリの利権なんだよ」
生活保護費とクスリの利権……どのような関係にあるのだろうか?
まず、膨れ上がる生活保護費が、この国の財政を揺るがせるほどの負担になっていることは否めない。あの08年のリーマン・ショック以降、受給者は増え続け、昨年時点で21 0万人に到達。生活保護費は、国と地方を合わせ総額3兆7000億円。もはや限界だ。
そこで安倍政権は今回、生活保護費のうち、衣食住の費用に充てる「生活扶助費」という枠をクローズアップし、大幅引き下げを言いだした。ここがミソだ。前出の厚労省関係者によると、安倍政権がこの「生活扶助費」に切り込むことをことさら強調したせいで、問題のすり替えが行われたというのだ。
生活保護費カット
安倍政権は発足直後から、2004年度以来9年ぶりの生活保護費の減額を打ち出し、13年度から、生活保護費のうち月々の日常生活費に相当する生活扶助を約7.3%、金額にして単年度で221億円をカットする。期末一時扶助金を合わせ、3年間総額で740億円の減額になる。
「生活扶助費というのは、生活保護費のうちの衣食住にかかる費用のこと。田村憲久厚労大臣は報道陣を前に、最低賃金で働く家庭のほうが、生活保護費受給家庭より冷遇されているというデータをわざわざ持ち出し、生活保護費を3年間で740億円削減する根拠にした。これって、食事や着るものくらい粗末でもいいんだから辛抱しろという話。そんな話を新聞・テレビが大々的に垂れ流す一方で、実は、生活保護費の中でももっと大事な予算の削減が行われようとしている。400億円以上のカットが予定される『医療扶助費』のこと。ここにクスリの利権が潜んでいる」(前出・厚労省関係者)
実は、したたかな自民党は、政権奪取をする前から、この「医療扶助費」という枠を使った巧妙な利権のカラクリを仕掛けていた。